ジャカルタ首都圏では、新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出制限や移動制限や、在宅勤務推奨により以前渋滞が少なくなってきていますが、ワクチン接種等により少しずつ街に活気が出てきて渋滞も少しずつ増加しているようです。
政府は渋滞解消の方策として公共交通指向型開発を進めているようです。
国家開発企画庁によると2018年のジャカルタ首都圏の交通渋滞による経済損失額は100兆ルピア(約7,500億円)だったそうです。
そのうち40兆ルピア(約3,000億円)は費用の損失で、60兆ルピア(約4,500億円)は時間の損失として試算されていて、ジャカルタ首都圏の域内総生産の4%に相当します。
1人当りの経済損失額は年間300万ルピアとなります。
渋滞解消の方策として公共交通指向型開発(TOD Transit-Oriented Development)が進められています。公共交通機関の利用を促進して、自動車に依存しない都市開発を目指すことです。
日本でも東京や大阪で私鉄が郊外に鉄道を延伸して駅を作り、その駅周辺を宅地開発していく事が進められていました。鉄道会社としては、開発した宅地や住宅の売上が鉄道整備の費用として取り込めるだけでなく、鉄道整備の結果地価が上昇して税収も上げる事が可能です。
大都市部への過剰な自動車の乗り入れによる社会的損失(交通渋滞や大気汚染など)を縮小させる施策としてはロードプライシングも有効です。都心の一定範囲に限り自動車の公道利用を有料化することで、市内への自動車を減らす方策です。
シンガポールの例が有名で、日本のETCのような入り口ゲートで自動的に料金が引き落とされる仕組みで、都心部でも渋滞はまったくない状態が保たれています。
ジャカルタの地下鉄MRT開発当時はシンガポールのようなロードプライシングを導入も検討されました。
ジャカルタでは結局ロードプライシングは行われませんでしたが、公共交通指向型開発に向けたTODプロジェクトを立ち上げ、インドネシア国鉄(KAI)が交通ネットワークを整備して、国営住宅公社が駅周辺に高層住宅を開発することにしました。
TODにより、公共交通機関へアクセスしやすい住宅ができ、駅などを中心とした土地に高層のマンションを建設する事で土地利用の最適化が行われます。
東京では、戦前よりTODによる開発が進められた結果、公共交通依存度は80%程度となっているため、世界的にも注目を浴びています。
数分毎に来る電車やバスは時刻表なしで、いつでも移動できることは、東京にいると当たり前ですが、世界的にはかなり稀な存在のようです。
東京と同程度のメガシティであるジャカルタ首都圏でも今後は、駅前住宅に住んで、電車通勤でジャカルタ中心部のオフィスまで通うようなスタイルが定着して、ジャカルタの悪しき渋滞が少しでも解消できるかもしれません。