ジャカルタから高速鉄道とフィーダー列車を乗り継ぎバンドン駅に到着し約2時間の短い滞在の後ジャカルタへ戻ることにしました。帰路はバンドン駅からジャカルタのガンビル駅へ向かう特急列車「アルゴ・パラヒャンガン」に乗車することになりました。
アルゴ・パラヒャンガン(Argo Parahyangan)列車は、バンドンとジャカルタ・ガンビル間の主要な交通手段の一つです。インドネシア国鉄(KAI)によるこの特急列車は、その名前に「アルゴ」と冠され、高いサービス水準と快適性で知られています。列車名の「パラヒャンガン」は、スンダ語で神々が住むとされる西ジャワ南部の山岳地帯を指し、この列車が繋ぐ地域の自然の美しさを象徴しています。
バンドン駅では、列車が既にホームに入線し、乗客の出発に備えていました。この駅は列車の始発駅であるため、乗客はゆっくりと荷物を積み込む時間があります。また、機関車の付け替え作業が間近で見られるのは、鉄道ファンにとって特別な体験です。この日の列車は、力強いディーゼルエンジンの音と共に待合室の前で機関車がつけ替えられ、その様子は迫力満点でした。
出発20分前には列車への乗車が許可され、私たちは5番線ホームへと移動しました。
列車の構成は、先頭に機関車、続いてプレミアム車両4両、食堂車、エクゼクティブ車両4両、最後にパノラマ車両が配置されていました。
私はエクゼクティブ車両に乗車し、その内装の美しさと快適さに感銘を受けました。
シートは2-2の配置で、リクライニング機能付きの快適な座席が整えられていました。各座席にはドリンクホルダーと電源コンセントが装備されており、長旅の間にもデバイスを充電できるため、便利でした。ただし、冷房が強めに設定されていたため、暖かい上着やブランケットがあるとより快適に過ごせるでしょう。私はそれらを持参していなかったため、約3時間の旅を寒さと戦いながら過ごしました。
列車は定刻通りに出発し、まずはバンドン郊外のチマヒ駅に停車しました。チマヒを過ぎると、列車はジャカルタ・ガンビル駅までの約170kmを一気に駆け抜けます。列車の中では、時速約50kmでオランダ統治時代につくられたカーブの多い山岳地帯をゆっくりと下りスマランから北本線に合流すると、その後は時速110kmで高速移動を行い、ブカシやジャティネガラを通過していきます。
18時50分にバンドンを出発した列車は、予定より15分遅れの21時45分にガンビル駅に到着しました。
高速鉄道の利用には、バンドン駅からフィーダー列車への乗り継ぎや、高速鉄道の終点ハリム駅からLRTやバスへの乗り換えが必要です。そのため、大きな荷物を持ってジャカルタに行く場合、アルゴ・パラヒャンガン列車の方が乗り換えが少なくて便利な選択肢となります。また、この列車の運賃は高速鉄道よりも安価で(エクゼクティブクラスで約20万ルピア)、バンドンからガンビルまで約2時間かかることを考慮すると、在来線特急列車の人気が高い理由が理解できます。列車のほとんどが満席であることから、高速鉄道の開通にもかかわらず、バンドンとジャカルタ間の鉄道輸送に対する需要が依然として高いことが伺えます。
もともと高速鉄道に押されて在来線の人気が下がるのではないかと思われていましたが、実際には高い人気を保っています。当日のチケットは残りわずかで、なんとかジャカルタ行きの席を確保できました。インドネシアの鉄道は、時間にルーズな印象のある国ですが、日本の鉄道のように比較的時間通りに運行されており、渋滞に巻き込まれることもないため、都市間移動ではバスよりも鉄道が好まれています。事前に予約しておくことをお勧めしますが、席が空いていれば駅の窓口でもチケットの購入が可能です。このような便利さと快適さから、ジャカルタからバンドンへの鉄道の旅を満喫することができました。