インドネシア料理といえば、ナシゴレンやサテが代表的で、日本人にも馴染みのあるメニューが多いですよね。しかし、まだあまり知られていない魅力的な料理が数多く存在します。その一つが「アヤム・ゴレン・クレメス(Ayam Goreng Kremes)」。この料理は、鶏の唐揚げにさらなる“揚げ粉”を使ったクレメス(kremes)というサクサクのトッピングが特徴で、特にジャワ地方で人気の高い一品です。もちろんマカッサルでも大抵のお店にあるメニューです。ここでは、クレメスの魅力や食べ方、調理法のポイントなどを詳しくご紹介します。
鶏の唐揚げに、なぜ揚げ粉が追加されているのかは、インドネシアにしばらく滞在していても最初は疑問でした。アヤム・ゴレン・クレメスは、インドネシアのジャワ地方を中心に愛されている揚げ鶏料理です。「アヤム・ゴレン(Ayam Goreng)」は「鶏の唐揚げ」を指し、そこに「クレメス(kremes)」というサクサク食感の揚げ粉フレークが加わることで、食感と風味の両面でアクセントが生まれます。唐揚げ自体もカリッと揚げられていますが、さらにクレメスがのることで二重のサクサク感を楽しめるのがポイント。口に入れた瞬間の「カリッ、サクッ」という軽快な音が食欲をそそります。
クレメスを鶏肉の衣が薄い部分にのせたり、サンバルと混ぜたりすると、淡白な鶏肉がスパイシーかつ香ばしい風味に変化し、最後の一口まで飽きずに楽しめます。インドネシアの食文化では、ご飯やサンバル(辛いソース)と一緒に食べるのが一般的。サンバルの辛みとクレメスの香ばしさ、そしてしっかり味が染み込んだ鶏肉の三重奏が魅力的で、ローカルに幅広く愛されています。
「kremes」はインドネシア語で「カリカリ」「サクサク」を意味し、その名の通り、食べたときの音や感触を表すオノマトペです。食感が際立つ料理だからこそ、このシンプルな言葉がしっくりきます。名前を聞いただけでも「何かサクサクしたもの?」と想像できるため、現地の人にも観光客にも覚えやすいというメリットがあります。
クレメスは、鶏肉を香辛料とともに煮込む工程で生まれる煮汁を活用して作るのが最大のポイントです。まず、鶏肉をショウガ、ニンニク、コリアンダー、ターメリックなどのスパイスと一緒に長めに煮込み、旨味をぎゅっと閉じ込めます。次に、鶏肉の風味やスパイスが染み出た煮汁を小麦粉や米粉などと合わせた生地に加え、少量の塩やコショウを入れて下味を整えます。
その後、熱した油にバッターを薄く流し込むようにして揚げると、フレーク状のサクサクとしたクレメスが完成。揚げ方次第でクレメスの細かさや仕上がりの食感が変わるため、まさに職人の腕の見せどころとも言えます。
クレメスの最大の魅力は、その“サクサク感”と“風味”にあります。煮汁に含まれるスパイスの旨味がフレークにも移っているため、そのまま食べても美味しく、唐揚げにのせると鶏肉の旨味をさらに引き立てます。クレメスをかじるときの「カリッ」という音が食欲を刺激し、噛めば噛むほどスパイシーな余韻が広がるのも特徴です。
アヤム・ゴレン・クレメスは単に「揚げ鶏を食べる」だけではなく、サンバルや副菜と組み合わせることで、さらに美味しさが広がります。はじめは何もつけず、鶏肉とクレメス本来のスパイスの香りをじっくり味わいましょう。噛むほどにあふれる旨味とサクサク食感が絶妙で、そのままでも十分な満足感があります。
サンバルという辛いソースとクレメスを絡めながら食べると、一気にピリ辛の刺激が加わり、飽きることなく箸が進みます。甘みのあるサンバルと香ばしいクレメスの相性は抜群で、辛いもの好きにはたまらない組み合わせです。
インドネシアでは白いご飯(ナシプティ)が欠かせません。クレメスやサンバル、そして鶏肉を一緒に口に運ぶことで、それぞれの味と食感がご飯と相まって豊かなハーモニーを奏でます。ワンプレートにまとめて豪快に混ぜながら食べるのもおすすめです。
アヤム・ゴレン・クレメスは、鶏肉の唐揚げにクレメスというサクサクのトッピングを加えた、ジャワ地方を代表するインドネシアの伝統料理です。最初は「唐揚げに揚げ粉を足すってどういうこと?」と疑問に思うかもしれませんが、実際に食べてみると、その食感の面白さやスパイスの風味に虜になること間違いなし。スパイスの効いた柔らかな鶏肉と、香ばしいクレメスのコンビネーションが絶妙です。インドネシアを訪れた際には、ナシゴレンやミーゴレンだけでなく、このアヤム・ゴレン・クレメスもぜひ試してみてください。サンバルの辛さ、クレメスのサクサク感、そしてジューシーな鶏肉の相乗効果で、きっと忘れられない食体験になることでしょう。