B737-900ERを所有するライオン・エア!微妙な機体の900ERについて深堀します
737-900ERは日本の航空会社では使用していないため馴染みがないのですがインドネシア最大LCCであるライオン・エアはこの機種をメインに飛ばしています。
737-900ERのローンチカスタマーとして最初の機体をライオン・エアが2007年4月に受領しています。今の所、900ERは使い勝手が悪く、エアバスA321に負けている状況です。
ボーイング737シリーズ
短・中距離用航空機である737シリーズはこれまでに6,000機以上の受注を獲得しています。737NG(ネクストジェネレーション)は従来型737型機を基盤とし、最先端テクノロジーを導入しています。燃料効率の向上、航続距離の延長、座席数の増加、エンジンのメンテナンス・コストの削減をもたらして、数々航空会社で導入されています。
737-900ERは一番長い機体
737-900ERは、737シリーズの第3世代と呼ばれるネクストジェネレーションの最長モデルです。737-900型機の座席数を増加、航続距離を延長した航空機で、インドネシアのライオン・エアより30機の受注しローンチした機体です。
737-600型(全長31.2m)
737-700型(33.6m)
737-800型(39.5m)
737-900型(42.1m) と型番が増えるにつれ、機体が長くなっていきます。
737-900ER型はその737-900型の航続距離をさらに延長したタイプです。CFM56-7Bエンジンに換え、CFM56-7BEエンジンを採用し、737-900型よりも925kmほど航続距離を伸ばしたタイプです。
32列A,F席は快適です!
737-900型と737-900ER型の最も簡単な見分け方はドアの数です。
737-900ERには後部にもうひとつドアがありますので、注意して見ていればすぐに分かります。
後部ドアの席は非常口となっています。通常非常口の席も3-3の座席が配置されますが、737-900ERは後部の横幅の関係で非常口の席31列目が2-2の座席配置となっています。その次の32列の窓側A,F席の前に座席がない配列となっています。
その席はラッキー席で足が伸ばし放題の快適空間であります。
ライオン・エアはLCCで座席数は214席で配置、座席間隔が29インチで詰め込みしていますので、広さがかなり違います。
737MAXが後継機だが…
900型後継機種は「B737MAX9」で、生産が開始された途端に休止になってしまいました。
「MAX9」も、胴体長はほぼ同じで、ボーイングは更に胴体を延長した「MAX10」も計画していますが、まだ生産はされていないということです。
中長距離運用での要望増加
737で最も売れている800型の座席数は180席です。
ライバル・エアバスのA321などの影響で、800型より一回り大きい200席級を望むエアラインも出てきました。ちょうどLCCが注目され始めた時期で、800型では座席不足との意見が多く出ました。
ボーイングは新たに900型を計画、それまで「短距離機」と言う常識だったナローボディ機は、技術の進歩で5,000キロ以上の中距離路線での運用が可能になり、運航コスト削減に大きく貢献していた。
燃料高騰により世界はとにかく運行コストの安い旅客機を多頻度で運行するようになり、ナローボディ機の需要は増加した。
ボーイングで唯一200席級のナローボディ機だったB757は生産を打ち切っていたため、B737-800が最大のナローボディ機になっていました。
座席増加は簡単ではない
最初900型は最大座席数が190席と若干増えただけの機体で、世界的には注目を浴びませんでした。エアラインが望んだのは200席以上で、LCCの中には物理的に230席程度まで可能なはずと主張していました。
しかし、座席数を増やすと言うのは簡単ではなく、特に180席以上となる場合は、非常口を増設し緊急時の対処を施す事が国際基準で決められているからです。さほど需要が見込めないと判断したボーイングは、800型と同じレイアウトで開発したため、非常口を拡大もしくは1か所増設するだけにしたのである。
900ERはライオン・エアの要望
900-ER型はインドネシアのLCC「ライオン・エア」の要望にこたえたもので、高密度配置の座席なら最大220席程度設けることが出来る。200席級となったため、胴体後部に乗降用のドアが新設されていることが主な識別点となっている。
900-ERの登場で、B757の後継機種とボーイングは銘打ったが、その分機体総重量は下げられており、航続距離は初期の通常型の5,900Km程度に抑えられているため、LCC以外では採用されていない。
ボーイングは757の後継機種を新しく作ることに抵抗気味で、エアバスはA321neoを先行させ、更に航続距離延長型の「LR」、長距離型の「XLR」がローンチして、XLRの航続距離は双発ナローボディ機としては最大の8,000Kmに達している。
737-900ERが不人気な訳
737は初代から一貫して同じ胴体を受け継いでおり、それが開発費用と機体価格を大きく抑えているのだが、長距離飛行には物理的に不向きな形状です。
長距離運航は乗客の荷物が増えるし貨物輸送も収入源になりますが、737の胴体は、航空貨物を輸送すると言う考えがないため床下の貨物スペースは最小限であり、コンテナの搭載は出来ません。短距離路線であれば737で充分なのだが、飛行機の性能が飛躍的に向上し、中距離路線ならば運行コストの安いナローボディ機で運用が可能になったからです。
エアバス社のA321は、ベースとなるA320の開発からコンテナの搭載が出来るよう胴体径を大きく取ってあるので、ワイドボディ機のようにコンテナを並列には搭載できないが、同規格のコンテナを搭載できる。
ボーイング757は、これまでで最も「大きい」ナローボディであり、コンテナはもちろん、航続性能も優れていた。設計は古いが、姉妹機B767とエンジンやパーツが共通化されており、特にエンジンは767と同じスペックを持つ。そのためエンジンには余裕があり、座席数・貨物を搭載してもアメリカ東海岸とヨーロッパを結ぶ大西洋横断も可能であった。
これが未だ757を手放せないエアラインが多く存在する理由です。座席数だけで後継機とするB737-900ERでは飛ぶことは出来ても、757やA321の様な乗客と貨物の両立がこなせず、期待された割にはただ座席数が多いだけのモデルになってしまいました。
737-900は生産された500機余のうち、最大のユーザーはユナイテッド航空の148機。続いてデルタ航空の130機、ライオンエアグループが128機と続く。この2社1グループで8割以上を占めています。
737MAXも不運
世界の現状を考えれば、もっと売れても良いモデルですが、エアバス「A321neoXLR」に取られ、期待の「MAX」は生産が止まったままです。
737-900ERは、使用用途から、737本来の良さを発揮できる良い機体ですが、「地味」な機体であることは残念です。
737-100型から半世紀かけて進化した最後の機体である900番を超える形で登場した737-MAXは、ライオン・エアで墜落事故を起こして苦悩しているのは皮肉であると言えます。