イスラムと豚を通じてインドネシアの寛容性を感じる
インドネシアは、イスラム教の人口が世界一ですが、あえてイスラムが禁じている「豚肉」をインドネシアで、しかもイスラム色が強いマカッサルで食べてみることで、インドネシアの寛容性を考えたいと思います。
イスラムというと、日本の多くの人は、まずアラブの国「中東」をイメージする人が多いと思います。しかし世界で最もイスラム教人口の多い国は「中東」ではなくインドネシアです。
インドネシアの人口は2億7,000万人ですが、宗教省の統計によれば、宗教人口の比率はおおよそ下記の様な宗教人口比率となっています。
イスラム教 87.21%,キリスト教 9.87%(プロテスタント 6.96%,カトリック 2.91%),ヒンズー教 1.69%,仏教 0.72%,儒教 0.05%,その他 0.50%
(2016年,宗教省統計)
しかし、インドネシアのイスラム教は、中東ほど厳しいイメージはなく、とても寛容なイスラムが、そこにはあるのです。
イスラム教徒が食べても良いものを「ハラルフード」といいます。「ハラル」とは、イスラム法で認められた「こと」や「もの」を示す概念。つまり「ハラルフード」は「イスラム法で、食べても良いと認められた食品」を意味します。
イスラムでは、豚肉を食べることは禁じられていますので、そのため消費されている肉の多くが牛肉と鶏肉です。
インドネシアで全く豚が食べられないかというと、マカッサルでも豚肉を出す焼肉店もオープンしており、おいしい豚肉を食べる事が可能です。マカッサルでも焼肉以外の豚肉料理を出すレストランもあります。ジャカルタでは、豚肉を使った豚骨ラーメンの店が人気だったりもします。
なぜなら、インドネシアには、イスラム教以外の人たちもたくさんいるからです。
インドネシアのバリではヒンズー教徒が多数を占めているため、バリ人は豚なくして生きていけないほど豚肉が好きです。
マカッサルの事業を手伝ってくれているバリ人も、一緒に豚肉を食べに行けますが、ムスリムを一緒に連れていくかは誘ってみての話となります。
ムスリムの中には、豚肉以外を食べるから大丈夫という人もいれば、豚肉を使った料理でなくても、豚肉を調理するのと同じ包丁や鍋で作った料理もダメで、豚肉が少しでも接触する店は行きたくないという人といろいろです。
日本でも、この数年イスラムからの海外客を迎えいれようと「ハラルフード」を見かける事が多くなりました。イスラム教徒でも食べられるものについて、「ハラル」の認証が与えられ、イスラムの人たちは、ハラル認証がついたものであれば安心して食べることができる。
だから「ハラル認証を取れば、イスラム圏に対しても、ビジネスチャンスが広げられる」といった動きが、なかばブームとして存在したことは否めません。
イスラム人口が圧倒的多数インドネシアのイスラムは寛容であると言っても、イスラム以外の人たちにも、配慮する姿勢が充分にあり、イスラム以外の人とも共存ができているのです。
インドネシアを理解しようと思うならイメージを根拠に決めつけるのではなくて、その場、その場に、自らが赴いて、その「現場」や「人」をしっかり見つめること。
単に見つめるだけでなく、何度も何度も訪れて、何度も何度も交流して、しっかりと見つめる続けることが大事だと思うのです。
現場を見れば見るほど、また、現地の人と触れあえば触れ合うほど、インドネシアはイスラムだからみたいな言説が、いかに現実から背いたもので、いかに意味のない事であるかがわかると思います。
特に、最近はネットニュースやSNSの発達で、現地にいなくても色々な事がわかるようになりました。そのコメントの中には、一部の言動が誇張され、違った意味で拡散され炎上する事態が多発しています。
今までのプロセスや、交渉過程など知らない人は結果だけで判断して、あれこれ言う人も多くなっていて、どれが本心でどれが偽りかが文章だけでは、判断できない事が多くあります。
インドネシア人が、イスラム人口が世界で最も多いからという理由だけで、豚を食べたり、お酒を飲んではだめと決めつけるのではなく、交流して個人の気持ちを一番に尊重してあげて、大丈夫か大丈夫ではないかを確認して、理解してあげる事が一番大事かと思います。