インドネシア木製手洗器が繋ぐ縁、手作り古民家ホテルで過ごした特別な夜
インドネシアと日本、遠く離れた2つの国をつなぐ木工製品。その魅力に惹かれ、3年前に始まった縁が鹿児島で特別な形となって実を結びました。コロナ禍を乗り越えながら、インドネシアの工房と協力して作り上げた木製手洗器が、プロジェクトに関わった仲間が手作りで改装した古民家ホテルに設置されたとの知らせを受け、鹿児島を訪れることにしました。今回は、この木工製品を通じて育まれた絆を確かめ、新たな挑戦に向けた一歩を踏み出す旅でもありました。
縁がつないだ鹿児島訪問の理由
私が初めて鹿児島のこのプロジェクトに関わったのは、コロナ禍が始まった2021年のことでした。当時、インドネシアの木工製品、特に木製手洗器に惚れ込んだという方から相談を受けたのがきっかけでした。木のぬくもりと機能性を兼ね備えた手洗器を探し出すというミッションは、一見簡単そうに思えましたが、実際には困難の連続でした。
コロナ禍による取引減少の影響で、多くの工房が閉鎖されていました。ようやく見つけた工房も倒産という厳しい状況に直面しましたが、諦めずに情報を追い続けた結果、委託製造を担っていた別の工房を見つけ出すことに成功しました。そこからの交渉は粘り強く行い、ようやく試作品が完成し、日本に届いたのは昨年のこと。その製品が鹿児島の古民家ホテルに設置されたとの知らせを受け、今回の訪問が実現しました。
この訪問は、製品を確認するだけでなく、これまでの取り組みへの感謝を直接伝える絶好の機会でもありました。また、このプロジェクトが生み出した縁をさらに深め、日本とインドネシアを結ぶ新たな可能性を探る場としても特別な意味を持つものでした。
鹿児島への旅路、期待感に包まれて
羽田空港から鹿児島空港へのフライトでは、窓から見える青空と雲海を眺めながら、心が高鳴るのを感じていました。この旅は単なる訪問ではなく、4年越しのプロジェクトが結実する瞬間に立ち会うものでもありました。離陸時のエンジン音や機内の静かな空間さえも、この旅の特別感を引き立てていました。
鹿児島空港から車で古民家ホテルのある南九州へ向かいます。
途中立ち寄った展望台では、桜島がその雄大な姿を見せ、噴火の様子まで確認できました。この自然の圧倒的な力強さに触れるたび、南九州の魅力を再発見し、地元の風景がプロジェクトの中でどのように生かされているのか想像が膨らみました。
車内では、これまでのプロジェクトの進捗や苦労話に花が咲きました。車窓から流れる景色と会話の中で、旅の期待感はますます高まっていきました。
古民家ホテルでの感動の瞬間
古民家ホテルに到着した瞬間、そこには歴史と現代の調和が息づく美しい空間が広がっていました。
建物全体からは、年月を重ねた木材のぬくもりが感じられ、まるで時間がゆっくりと流れているようでした。そして、その中に設置されたインドネシアから届いた木製手洗器を見た瞬間、感動が胸に込み上げてきました。
チーク材の自然な風合いがそのまま生かされたデザインは、ホテルの雰囲気に見事に溶け込み、単なるインテリアではなく、この空間の象徴的な存在となっていました。製品がここに設置されるまでの道のりを振り返ると、困難を乗り越えてきた自分たちの努力が報われた思いがしました。
さらに、この日はプロの写真家が撮影を行う特別な日でもありました。木製手洗器だけでなく、古民家全体の美しさを捉えた写真が今後ホームページやSNSで公開される予定と聞き、プロジェクトが次のステージに進んでいる実感を得ることができました。自分が携わった製品がこのように形となり、多くの人に見てもらえるというのは、何事にも代えがたい喜びでした。
夕食会、古民家で紡ぐ絆
夕食は、プロジェクトに関わったメンバーとともに古民家内でいただきました。南九州名産の鶏刺しをメインに、地元の素材をふんだんに使用した料理が並びました。手作りの温かみを感じられる料理はどれも絶品で、言葉では言い表せないほどの感動を覚えました。
食事の合間には、これまでのプロジェクトの振り返りや今後の展望について語り合いました。来年本格発注の際には再度インドネシアで集合することを決め、プロジェクトのさらなる発展に向けた計画を練ることができました。
お酒が進むにつれ、冗談や思い出話も飛び交い、会話の中には笑い声が絶えませんでした。このプロジェクトを通じて築かれた絆が、単なるビジネス関係を超えた深いものとなっていることを強く感じました。
特別な時間がもたらす感動と未来への期待
今回の訪問は、人と人とのつながりの大切さを再確認する時間でもありました。インドネシアと日本、2つの国を結ぶ木工製品という橋渡しが、これほど深い絆を生むとは想像以上でした。
2025年に正式オープンを迎えるこの古民家ホテルは、地域の魅力を発信する新たな拠点となるでしょう。その第一歩に立ち会えたことは、私にとっても大きな誇りであり、このプロジェクトがさらに発展していく未来を楽しみにしています。
今回の訪問を通じて、これからの挑戦への意欲がさらに高まりました。次回訪れるときには、さらに多くの人々がこのホテルを訪れ、インドネシアの木工製品の素晴らしさを感じている姿を目にすることを期待しています。この旅は、私にとって新たな希望と感動をもたらす、忘れられない時間となりました。