クアラルンプール国際空港(KLIA)を飛び立つバティックエア・マレーシア(Batik Air Malaysia)OD193便で、いよいよバリ・デンパサールへ向かうことになりました。ところが、今回のフライトはまさかの“満席+隣は子ども連れ”に囲まれ、座席の狭さや賑やかさに耐えながらの約3時間。さらに、インドネシアのバティックエアとは別会社ということもあり、サービスはまさにLCCスタイルに苦悩したフライトでした。
バティックエア・マレーシア(Batik Air Malaysia)OD193便(機体番号9M-LDC)。「バティックエア」というと、インドネシアでおなじみのフルサービス寄りなイメージを持って搭乗したのですが、今回乗ったのは“マレーシア版”のバティックエアで、調べてみるとLCC(ローコストキャリア)としての運用がメイン。事前情報をしっかり集めていなかったため、「食事や飲み物が出るのでは?」という淡い期待はあっさり覆されてしまうことになります。
自分の座席は窓側の18F。景色を楽しむには最適な位置……かと思いきや、隣には体格の大きなお父さんが2歳の男の子を抱えて着席。お子さんはまだまだ好奇心旺盛な年頃らしく、搭乗前から機内を走り回ろうとする勢いです。お父さんもスマホの動画であやしたりしていましたが、子どもの動きはまったく止まらず、座席に収まろうとしない状態。
満席の機内では逃げ場がないのがつらいところ。通路側には別の乗客がすでに座っているため、こちらが席を移動することも難しく、結局は窓側に身を縮めるしかありません。抱えられたお子さんが腕や足をばたつかせるたびに、こちらのスペースまで侵入。3時間のフライトが始まる前から、その先の“苦行”を想像してやや絶望感が漂っていました。
14時15分ごろから搭乗が始まり、一通りの乗客が席に着いたのが14時40分ごろ。その時点でドアは閉まったのですが、まったく動く気配がありません。客室乗務員が何度か通路を行き来しており、どうやらまだ何かの調整をしている様子。「このまま待つしかないのか」と思いながら、狭い座席でひたすら耐える時間が続きます。
結局、プッシュバックが始まったのは15時20分。すでに搭乗開始から1時間以上経っているため、周囲の乗客たちも疲れとイライラが隠せない感じ。お子さん連れのご家族は特に大変そうで、機内のあちこちで泣き声や愚図り声が聞こえてきました。
ようやく離陸し、高度を上げていくと、窓の外には雲海が広がり、遠くにマレー半島やインドネシア・スマトラ島の海岸線が薄っすらと見えています。普段なら「うわあ、きれいだなあ」と感動するところですが、今回はそんな余裕もあまり持てません。
そもそも、目の前には小さいお子さんがいて、こちらに足を伸ばしてくるたびに体を避ける必要があります。座席の前後間隔もそこまで広くはなく、シートピッチの狭さがじわじわと苦痛を増していく状態。立ち上がって通路に出るにも、通路側の席には別の乗客がいてスペースを作りにくい状況です。結局、「到着までトイレは我慢しよう」と覚悟を決めるしかありませんでした。
インドネシアのバティックエアでは、短距離フライトでも軽食や飲み物が出る印象がありましたが、マレーシア版はまったく異なるようです。離陸後しばらくして機内販売がスタートしましたが、無料の食事やドリンクのサービスは一切なし。「水くらいはあるかも」と期待していたのに、実際には有料販売のみでした。
クアラルンプールの搭乗口でセキュリティチェックが行われ、持ち込みの水が没収されたことも痛手です。結局、のどが渇いたので機内で水を買う羽目に。これもLCCだから仕方ない…と割り切るしかありません。
バティックエア自体はインドネシアで有名な航空会社ですが、実はマレーシア版は別のグループ会社という事実。ルールや運賃体系、サービス内容が異なるため、事前にきちんと調べておかないと「食事付きだと思ってたのに…」とガッカリしてしまいます。私自身、インドネシアのバティックエアをそのまま当てはめてしまったため、今回の“何もない”状況には正直戸惑いました。
フライト中盤になると、さすがにお子さんも疲れてきたのか、抱えられたまま眠りに落ちました。客室が一瞬静かになると、「やっと休めるかも…」と心の中で安堵。しかし、子どもの足はまだときどき夢の中で動いているようで、こちらの座席を蹴ってきます。決して悪気はないのでしょうが、ストレスはじわじわ溜まる一方です。
トイレに行くにも、周囲は満席で通路側のお客さんも眠っている状態。起こすのも申し訳ないし、自分の座席の前後には赤ちゃん連れがいて、通路で立ち止まるのも躊躇される雰囲気。LCCの狭い座席レイアウトゆえに、全体的に“ゆるりと移動する”選択肢がほぼありません。時計を見ると、まだ到着予定時刻まで1時間近くあることに気づき、ため息がこぼれます。
フライトが終盤に差し掛かり、機体が降下を始めると、バリ島の海岸線が少しずつ見えてきます。時間は夕方。オレンジ色に染まる雲の切れ間から、インド洋に浮かぶバリ島が姿を現し、心が少し軽くなる瞬間です。クタやヌサドゥア方面のビーチラインがぼんやりと確認でき、ようやく「到着できる」と実感がわきました。
窮屈なフライトとはいえ、やはりLCCはチケット代が安いという大きなメリットがあります。直行便が取れなかった事情もあって仕方ない部分はあるものの、もし次にマレーシアからバリへ飛ぶ機会があるなら、マレーシア航空などのフルサービスキャリアも検討したいところ。少なくとも、ある程度の空席があればストレスなく過ごせますが、今回のように満席+子ども連れ多数という条件が重なると、なかなかハードな体験になるのは事実です。
無事に着陸し、ターミナルに向かう頃には、こちらの疲労感もピーク。それでも、バリ島の空港に一歩足を踏み入れると、南国の香りと独特の活気が迎えてくれます。子連れのご家族や他の乗客も、ここに来ればやはり心が浮き立つようで、出口へ向かう通路では笑顔が増えていました。
今回の遠回りルートの最終目的地はインドネシアのマカッサル。バリまで来たらもう一息、国内線に乗り継ぐ予定です。