バリ島での旅を存分に楽しんだあとの帰路はいつでも名残惜しいもの。特に雨季の夜は、まるで「もう少しここで過ごしていって」と言わんばかりに、しとしとと雨が降り続いたり、スコールがやってきたりするのが常です。そんな中、バリ島からマカッサルへ帰る最終便に乗るべく夜のクタを出発し、雨上がりのングラライ空港を経てマカッサルへ。21時30分発のバティックエアID6760便(A320-200/PK-BKY搭乗機)がどのようなフライトだったのか、お伝えします。
出発時刻となった21時30分、肝心のドアクローズがなかなか行われません。バリ島のングラライ空港は夜になると国際線の離発着が集中するため、1本しかない滑走路やスポットが混雑することが珍しくありません。そんな背景もあってか、機材は到着しているのに出発が遅れ気味になっていました。21時40分を指してようやくドアが閉まり、ようやく出発準備に入りました。
夜の空港では誘導路や滑走路のライトが美しく輝き、窓の外を見ているだけでも飽きません。国際線の大型機がテイクオフを待っている姿や、別の国内線がスポットに入ってくる光景を見られるのは、夜ならではの魅力。機内ではエンジンの始動音が低く唸りを上げ出発していきます。順番待ちを終えて滑走路に入ると、一気にエンジンが出力を高め、A320特有の軽快な加速感が伝わってきます。街明かりがにじむ夜のバリ島が、滑走路脇を駆け抜けるようにして遠ざかっていくのは、不思議な高揚感を伴う瞬間。離陸後しばらくはバリ島の夜景を上空から見下ろせるので、「ああ、今回の旅も終わりか」と少し感傷に浸りながらも、次第に小さくなる灯りを見て静かな興奮を味わいました。
バティックエアに乗る際、フライト時間が短くても、パンとミネラルウォーターが配られるのが通例です。離陸後20分ほどして機内が水平飛行に移ると、キャビンアテンダントが順番に客席を回り始めました。この時刻はすでに22時半を過ぎており、大半の乗客は疲れからうとうとしている様子。寝ていようとも、CAさんがトレーを引き出しパンと水を配っていくのはインドネシアらしい感じですが、受け取ってすぐまた眠りに入ったりという光景があちこちで見られました。夜も更けていることから、実際にパンを食べる人はあまり多くなかったように感じます。
1時間のフライトはあっという間。短距離路線ゆえ、しばしの水平飛行のあと、すぐに降下が始まります。22時40分を回ったところで座席ベルト着用サインが点灯し、キャビンアテンダントが再度アナウンスを行いながら、リクライニングやテーブルのチェックを実施。離陸からわずか40分しか経っていないのに、もう着陸準備という短さが、国内線移動の手軽さを改めて感じさせてくれます。しばらく窓の外は真っ暗闇が続きますが、降下が進むにつれ、少しずつ地上の光が広がり始めます。
マカッサル市内のオレンジ色の街灯や建物の明かりがぽつりぽつりと見え出すと、「ああ、戻ってきたんだ」という安堵感が込み上げてくると同時に、バリ島の雰囲気とは違う大都市の夜景を予感させます。最終的に、23時過ぎには滑走路にタッチダウンしほっと息をつく空気が漂いました。
マカッサルのハサヌディン国際空港に着陸後、ターミナル直結のスポットではなく沖止めエリアへと向かいます。夜間のため大きなフラッドライトが照らす駐機場は、さっきまでの闇を忘れさせるような明るさ。飛行機のタラップを降りると、ムッとした夜の空気が身体にまとわりつき、改めて「帰ってきたな」という実感がわき上がってきました。
沖止めされた場所からターミナルまではバスで移動します。バスの窓越しに見るマカッサルの空港ターミナルは、深夜近いということもあり人の動きは少なくなっています。疲れきった身体に染み渡ります。こうしてバス移動を経てマカッサルに戻ってくると、バリ島とはまた異なる活気や文化が待っているのを実感。
わずか数百キロの移動でこんなにも環境が変わるのが、多島国インドネシアの魅力かもしれません。夜のマカッサルで、旅の終わりをしみじみと噛み締めました。