ホリデーイン・セパン(Holiday Inn Sepang)で一晩を過ごし、すっかり移動の疲れも取れた朝。部屋の窓から差し込む朝日の美しさに癒やされながら、11時30分にチェックアウトを済ませました。ここからはクアラルンプール国際空港(KLIA)へ向かい、バティックエア・マレーシア(Batik Air Malaysia)のフライトでバリ・デンパサールを目指します。本当はマカッサル行きの直行便を狙っていたのですが、その日には運航がなく、やむなくバリ経由になったという流れです。ところが、その“やむなく”が思わぬハプニングを引き起こすことになりました。
ホリデーイン・セパンは、KLIA1ターミナルから車で20分ほどの場所にある米国系ホテルチェーン。宿泊した15階の部屋は広々としていて清潔感があり、一晩しっかりと眠ることができました。朝はゆっくり起きて、11時30分にチェックアウト。事前に確認していたとおり、ホテルから空港までは無料シャトルバスが出ているとのことで、それに乗車してKLIA1へ向かいます。
車窓にはヤシの木が両脇に並ぶ広い道路が続き、まるで南国リゾートへ向かうドライブのよう。
ホテルの近くは緑が多く、所々に南国特有の花が咲いているのが見えます。20分ほど走ると、KLIA1のターミナルビルが視界に入ってきます。
バスを降りてターミナル内へ入ると、国際空港らしい活気に満ちた空気が一気に広がります。エアアジアやマレーシア航空など、おなじみの看板が並ぶなか、私が向かうのはバティックエア・マレーシアのカウンターです。ここでまず大きな荷物を預け、搭乗券を受け取る必要があります。
実は、クアラルンプールからマカッサルへ直行するエアアジア便があればベストだったのですが、この日は運航がなく、バリ経由を余儀なくされました。とはいえ、バリ島に寄り道するのも悪くない…と軽く考えていたのが、後々ちょっとした事件を引き起こすことに。
チェックインを済ませた時点で、出発までは約2時間。空港内のレストランやカフェを利用する手もありますが、どうせなら空いていて快適な場所がいい…。そこで思い出したのが、プライオリティパスを利用できる“サマサマホテルのSphere Lounge”です。KLIA1ターミナルと連結したホテルにあり、専用のバギーを使ってアクセスできます。通常、制限エリア内のラウンジは混雑しがちですが、このラウンジは一般エリア内にあり、ホテルの中にあるので比較的空いているという情報をキャッチしていました。
さっそくターミナルからスカイブリッジを進もうとすると、専用バギーが見当たりません。どうやらスタッフに連絡して呼び出すシステムらしく、少し探したものの見当たらず。とはいえ、歩いて5分ほどでホテルに着くとのことなので、そのまま歩くことにしました。やや蒸し暑い空気の中を進みますが、5分程度ならそこまで苦にはなりません。
ホテルのロビーへ入ると、すぐにSphere Loungeの看板を発見。
プライオリティパスを提示すると、すぐさま案内してくれました。
ロビーの一角にあるカフェスペースのような雰囲気ですが、落ち着いたインテリアで居心地が良さそう。ソファやテーブル席がゆったり配置され、午後のひとときを過ごすのにぴったりです。
スタッフに「アルコールはタイガービールのみですが何度でもおかわりできます」と言われ、驚き半分、嬉しさ半分。しかも氷点下かと思うほど冷えたグラスが用意されており、ビール好きにはたまりません。
日本の猛暑を思い出すほど、キンキンに冷えたビールとともに昼食をスタートできるなんて、プライオリティパス恐るべし。
食事はアラカルトメニューから2品まで選択可能という太っ腹なシステム。迷った結果、ビーフハンバーガーとサテアヤムをオーダーしました。スナック用のおつまみも先に提供され、ビールの進み具合は最高潮に。
ほどなくして運ばれてきたビーフハンバーガーは、肉厚パティから肉汁があふれ出し、焼きたてバンズがふわふわの理想的な仕上がり。サイドのポテトもカリッと揚がっていて、思わず笑みがこぼれます。
もう一品のサテアヤムは、炭火でしっかり焼き目が付いた鶏肉が特徴的。外はカリッ、中はジューシーという黄金コンビネーションに、甘辛いピーナッツソースを付けて味わえば、南国感が一気に加速。どちらもホテルレストランのクオリティを感じさせる絶品メニューでした。
これが無料(プライオリティパス分)で楽しめるとは、驚きの連続です。
あまりにも居心地が良いので、ついギリギリまでのんびりしてしまいました。ビールのおかわりまでして、ランチタイムを満喫していると「はっ、まだ出国していない!」と急に現実に戻されます。名残惜しい気持ちを振り切り、Sphere Loungeを後に。ターミナルへの移動は運良くすぐにバギーが来てくれました。
バギーに乗ると、乗務員が笑顔でスカイブリッジを駆け抜けてくれます。何ともVIP気分を味わいながら、あっという間にターミナルへ。ここからは急いで出国手続きと保安検査を済ませる必要があります。
出国を済ませたら、向かうのはバティックエアの搭乗ゲートG4。ANAで利用するサテライト側ではなく、KLIA1の本館部分にあるコンタクトピアへ移動します。マレーシア航空やバティックエアなど、マレーシア系の航空会社が使うエリアとのこと。ゲート前では再度の荷物検査があり、水や液体物を持ち込めないシステムがシンガポールのチャンギ空港と似ています。トイレもゲート内にはないので、事前に済ませておくのが必須。
ゲートでの荷物検査を終えたら、さらに手荷物の重量検査が待ち構えていました。バティックエア・マレーシアでは7kgまでが無料のようですが、私は日本からの土産物などを含めて明らかにオーバー…。するとスタッフが「1kgあたりRM50(約1,600円)」と告げてきます。マレーシアのLCCは規定が厳しいとは聞いていましたが、まさかここまでとは…。
周囲を見渡すと、同じように追加徴収されている乗客が多数。どうやら“荷物で稼ぐ”のもLCCの常套手段のようです。しぶしぶ追加料金を支払い、苦笑いしながらゲート前で待機する羽目に。安いと思って選んだフライトが、意外なところで出費を増やす格好になってしまいました。あとになって調べてみると、インドネシアで運航しているバティックエア本体とは別のグループ会社ということで、ルールや運用が違うようです。手荷物の厳格検査はマレーシア版の特徴なのかもしれません。最初からマレーシア航空を選んでいれば、こんなに慌ただしく追加料金を払わずに済んだのかもしれない…と、少し後悔の念が湧いてきます。
出国前のSphere Loungeで最高のランチを楽しみ、「このままバリまで快適旅行か!」と浮かれていたら、ゲートでの思わぬ荷物超過料金に苦笑い。LCCならではの落とし穴にハマってしまった形ですが、これも旅の一つの経験と言えそうです。