インドネシアでは、太古から香辛料の生産が盛んで、各地には豊富な香辛料を使用したスープが多く存在し、郷土料理として地域に根付いています。
インドネシア料理にはさまざまな種類のスープがありますが、代表的なスープはソト(Soto)でしょう。
ソトとは、インドネシアの伝統的にスパイスが効いた肉のスープのことで、透明なスープまたはココナッツミルクベースのスープ等があります。
一例として、ソトアヤム(鶏肉のスープ)が有名ですね。
南スラウェシ州のマカッサルでは、ココナッツとレモングラス等のスパイス原料を使用する「ボリュームたっぷりの牛肉スープ」を作ることで知られています。
スープの名前は「チョトマカッサル(Coto Makassar)」です。
チョト(Coto)とは、マカッサル語でソトの意味となります。南スラウェシで収穫される40種類ものスパイスをミックスして作られるため風味がよいことで知られています。
マカッサルの伝統的なスープであるチョトマカッサルは、牛(水牛)の肉と内蔵を使用しています。牛の内蔵も、腸、肝臓、肺、心臓、三頭筋、牛の脳などから出汁をとっていますので、どろりとした濃厚な味となっています。
ヤシの葉に包んで米を炊いた、おにぎりのようなケトゥパット(Ketupat)と一緒に食べます。
マカッサル市内にはチョトマカッサルを売る屋台がたくさんあり、いつでも多くのマカッサル市民で賑わっています。これらの露店の多くは、朝から夜まで営業しています。
屋台各店の味はほぼ同じですが、違いはスパイスの違いや配合です。
マカッサル市民は、自分の気に入った味による、お気にいりのチョトの店をもっています。よく話題で、あの店のチョトがおいしい、いやあの店だ、と美味しいチョト自慢をしています。
チョトマカッサルは、16世紀のゴワ王朝の頃から存在したと言われており、ゴワ王室の警備員の職務遂行前の朝食メニューでした。
簡単にすばやく摂取できるエネルギー源として食べられていました。
いつの時代になってもチョト人気は衰えません。
チョトマカッサルを食べにいくと、奥さんに怒られるという話をよく聞きます。
実は、チョトマカッサルは、牛の骨まで長時間煮込んでいますので、脂質が多く含まれており、高血圧の原因となってしまうからです。
ゴワ王朝時代からチョトマカッサルを食べすぎて、病気になってしまった話が、言い伝えられているからです。
しかし、あまりにも美味しすぎてやめられなく、奥さんに内緒で食べに行くそうです。
実際、チョトマカッサルは、コーヒーカップのような小さい器に盛られてきますので、沢山食べない様に工夫はされているようです。
最初にチョトマカッサルを食べに行った時は、あまりに美味しくお代わりをして2杯食べてしまいましたが、その話を聞いてから今は1杯で我慢する様にしています。
付け加えておくと、チョトマカッサルに使用されるスパイスはスープの味を決めるのに役立つだけでなく、コレステロールを分解する働きがあるそうです。
マカッサルに仕事や観光にくるインドネシア人ですら、マカッサルに来たら、必ず食べたい料理であるチョトマカッサル。
食べすぎには注意ですが、地名が料理名となった、地元の逸品である事には間違いありません。
そういう私自身もマカッサルの町が好きになった理由は、チョトマカッサルがあったからかもしれません。急に無性に食べたくなるもの、ありますよね。
忘れられない味だから、くせになり、また食べにいく。
虜になるようなチョトですが、そんなマカッサル市民がみんな夢中となるスープを食べにきませんか?