バリ・ヒンドゥー教には数多くの祭礼日や祝日が存在します。今日(2024年2月28日)は、210日ごとに訪れるガルンガンの日です。ガルンガンは、善であるダルマが悪のアダルマに勝利を収めたことを記念する祝日であり、神々や祖先の霊、さらには自然霊が地上の寺院に降臨する特別な日とされています。この日、人々は祈りを捧げ、お供え物をすることで、日本のお盆に似た意味合いを持つ祭礼として祖先の霊を迎え入れます。
バリ島の伝統的な魅力と文化の核心に触れることのできるガルンガン(Galungan)とクニンガン(Kuningan)は、バリ・ヒンドゥー教の信者にとっては単なる行事を超えた意味を持ちます。これらは先祖や神々の霊がそれぞれの生まれ故郷に帰ることを祝う日であり、ガルンガンは210日を1年とするウク暦(Wuku)における最大の祭礼日の一つです。ウク暦は稲作の伝統的なサイクルに基づいており、210日を1年と定めています。この暦では210日を30週に分け、1週を7日とし、5週で1ヶ月(35日)、6ヶ月で1年(210日)となります。この暦の第11週の水曜日がガルンガンであり、その10日後の土曜日がクニンガンと定められています。
ガルンガンの前日はプナンパハン(Hari Panampahan)であり、この日には家を離れて働いている家族も帰省します。プナンパハンには、近隣や親戚で1頭の豚を分け合い、野菜や香辛料を使った祭り料理のラワールを作ります。また、プナンパハンの当日か前日には、各家庭が玄関にペンジョールと呼ばれる竹の装飾を施します。ペンジョールは祖先の霊が自宅に帰る際の目印とされ、35日間飾られます。
翌日のガルンガン(Hari Raya Galungan)には、人々は朝早く沐浴を済ませ体を清めた後、民族衣装のクバヤに身を包み正装します。その後、村の寺院や水利組合の寺院でお参りし、お供え物を捧げるのが一般的です。お参りの後は、訪れた友人や親戚を自宅で手料理のラワールでもてなし、楽しい時間を過ごします。ガルンガンは、先祖の霊がこの世に戻る日とされ、その準備は数日にわたって行われます。霊が迷わないように、家の門の右側にはフルーツや椰子の葉、花で飾りつけた背の高い竹の棒「ペンジョール」が飾られ、これがまるで日本の七夕の笹飾りを思わせます。
ガルンガンから10日後に行われるクニンガン(Hari Raya Kuningan)では、先祖の霊をあの世に送り出します。この日の儀礼は午前中に行われ、心の平和と静けさのために祈りが捧げられます。正午になると、神々と祖霊は天上へ帰るとされ、一連の祭礼が終了します。
バリ・ヒンドゥー教では、先祖や神々への敬意を表すため、家の中央にある家庭の祭壇にお供え物を捧げます。お供え物には、フルーツ、野菜、花、そして特別に作られたお菓子が含まれ、これらは神々や先祖の霊が地上に滞在する間、彼らをもてなし、喜ばせるために用意されます。また、特別な祭りの日には、バリ島のあちこちで豊かな装飾が見られ、これにより島全体が華やかに彩られます。バリ島では、ガルンガンとクニンガンを通じて、神々や先祖への敬意と感謝の気持ちが表現され、これらの伝統が今日も大切にされています。
ガルンガンとクニンガンは、バリ・ヒンドゥー教の伝統的な祭事であり、信仰、家族、そしてコミュニティの絆を強化する重要な機会です。これらの日々は、喜びと感謝の心を共有し、先祖とのつながりを再確認する時です。バリ島の文化と伝統の中で、これらの祭事は単に過去を振り返るだけでなく、未来への希望と繁栄を象徴しています。