インドネシアで史上最大規模の合併で巨大ハイテク企業が誕生しました。インドネシアの配車・決済サービス会社ゴジェック(Gojek)とEコマース大手トコペディア(Tokopedia)は昨日(2021年5月17日)に経営統合すると発表しました。統合会社の名前は2社の頭文字を併せて「ゴートゥグループ(GoTo Group)」となります。本日は、ゴートゥグループについてお話します。
ゴジェックは2009年創業のライドシェアの会社です。2015年にゴジェックアプリをスタートさせています。始めは20人のバイクタクシー運転手しかいなかったゴジェックは、今やモビリティ、フードデリバリー、ファイナンスなどの業務を抱えるユニコーン企業に成長しました。
トコペディアは2009年創業のインドネシアを中心とするECプラットフォームで、楽天などと同じ在庫を持たずに、メーカーや小売店などにサイトを売り場として提供するモール(商店街)型のEC事業を展開しています。ゴジェック同様にユニコーン企業に成長しています。
統合後の新会社は、インドネシアでネット通販、国際宅配便、配車、食品デリバリーなどのサービスを展開する東南アジア最大の未上場ハイテク企業となります。
ゴートゥグループの現在の価値は、合併前のゴジェックの評価額は105億ドル、トコペディアは75億ドルであり両社合計180億ドル相当と説明しています。
しかし東南アジア市場への注目度が高まっていることもあり、インドネシア史上最大の合併が完了すれば、評価額は350億ドル~400億ドルになると見られています。
報道によるとゴートゥグループは今年下半期にインドネシアで上場し、来年に米国上場する予定だそうです。現在米国で上場している東南アジアの大手インターネット企業はシンガポールの「Sea Group」しかないので、上場した際にはかなり注目されそうです。
両者が合併する一番のメリットが、島国インドネシアが抱える物流の課題を技術とビジネスモデルで克服できるからです。
インドネシアは約189万平方キロメートルと日本の5倍の国土に1万7000もの島があります。国内総生産(GDP)に占める物流コストの割合は日本の約10%に対してインドネシアは約24%と言われています。
商品を出品者から顧客のもとへ運ぶ際に、商品の金額よりも配送コストの方が高くつく、配送に時間がかかるため食品の賞味期限が近づいてしまう、といった問題が頻繁に起こっていました。
この課題を克服するため、トコペディアはゴジェックを含む11の物流業者と提携しています。出店者と購入者に配送業者を選ばせることで、配送の時間や品質を競わせるためです。物流業者をつなぎ合わせたことで、インドネシア全土の97%をカバーしています。
今後トコペディアで製品を購入する時、ゴジェックのGopayを使用して製品の代金を支払う際は、ゴジェックの当日配達料金が安くなることを目指しています。
ゴートゥグループは合併により、インドネシアの個人消費の3分の2をカバーできるそうです。
インドネシアでは人口2億7千万人の半数が、銀行口座を保有していませんが、携帯電話は大半の人が保有しています。
クレジットカード保有率も4%と非常に低いのですが、モバイル決済サービスの普及が急速に進んでいます。
インドネシアではモバイル決済企業が多数展開していて競争が激化しています。
ゴジェックが持つ独自のモバイル決済はGopayがありますが、インドネシアで一番使用されているモバイル決済はOVOです。
OVOは現在インドネシア最大のデジタル金融プラットフォームとなり、2019年10月に企業評価額が10億米ドルを超え、今回のゴジェック、トコペディア以外で、旅行サービスのTraveloka、電子商取引大手のBukalapakに続くインドネシアで5番目のユニコーン企業となりました。
トコペディアの決済では、OVOが一番使われている決済方法なので、今後のモバイル決済の再編にも注視していきたいですね。
また、インドネシア最大の携帯通信事業者であるテルコム傘下のテルコムセル(Telkomsel)が、ゴートゥ合併直前のゴジェックに3億ドルを投資したそうです。インドネシア国内に1億7000万人以上の携帯契約者を擁するテレコムセルが、ゴートゥグループにどういった影響をもたらすかも今後注目です。
東南アジアの人口は約6.7億人で、2020年のインターネットエコノミーの市場規模は1000億ドル(約11兆円)で、今後3000億ドル(約33兆円)に成長すると見込まれています。
インドネシア発の企業であるゴジェックとトコペディアの合併で、インドネシアの国内企業におさまらず、東南アジアの他の企業との競争に打ち勝つ必要があります。東南アジアのAmazonのような企業に成長するのか、今後のゴートゥグループの動きに期待したいですね。