Categories: Indonesia

イード? レバラン? イドゥル・フィトリ?多様な呼び名が語るイスラム文化の魅力

「イード(Eid)」「レバラン(Lebaran)」「イドゥル・フィトリ(Idul Fitri)」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。これらはイスラム教徒にとって断食明けの祝祭日を指す言葉ですが、それぞれの呼び名や背景には深い文化的・歴史的な違いがあります。同じお祭りであっても、地域や文化、言語の違いから特徴的な名前で呼ばれているのです。それぞれの言葉がどういう意味を持ち、なぜ複数の呼び方が存在するのかをお伝えします。

イード(Eid)とは

アラビア語で「祝祭」を意味するイード

「イード(Eid)」は、アラビア語で「祝祭」「祭日」を指す言葉です。イスラム教には年間を通じていくつか重要な行事がありますが、イードは特に以下の2つの祝祭を指す際に広く使われます。

イード・アル=フィトル(Eid al-Fitr)

ラマダン(断食月)明けを祝うお祭り

「断食明け大祭」とも呼ばれる

1か月間の断食を終えた喜びや、互いへの感謝を分かち合う

イード・アル=アドハー(Eid al-Adha)

犠牲祭とも呼ばれる

アブラハムの犠牲の物語に由来し、家畜を捧げる儀式が行われる

イスラム教徒が多い国や地域では大規模な家畜の寄付が行われ、貧しい人々と分かち合う伝統が根付いている

イドゥル・フィトリ(Idul Fitri)インドネシアでの公式呼称

「イドゥル・フィトリ(Idul Fitri)」は、アラビア語の「イード・アル=フィトル(Eid al-Fitr)」をインドネシア語の発音や文字表記に合わせて変化させた表現です。

Idul:アラビア語の「Eid(祝祭)」に相当

Fitri:アラビア語の「Fitr(断食を終える、純粋になる)」を示す単語で、「純粋」「清浄」を意味する

インドネシア政府が採用する正式な呼び方

インドネシアは世界最大のイスラム教徒人口を抱える国で、政府やメディアは公式文書などで「イドゥル・フィトリ(Idul Fitri)」という名称を使用しています。

祝日名としての利用:カレンダーにも“Idul Fitri”と記載され、国民全員がこの呼び方に馴染んでいます。

お祝いメッセージ:インドネシア語で「Selamat Idul Fitri」や「Mohon Maaf Lahir dan Batin(身体的にも精神的にもご容赦を)」と挨拶を交わし、断食期間中の苦労や過ちを互いに許し合う精神を示します。

インドネシアでの風習:大移動「ムディック」

「イドゥル・フィトリ」の時期になると、多くの人が故郷に帰省する「ムディック(Mudik)」という習慣があります。特にジャワ島などの都市圏では毎年数百万人規模の大移動が起こり、高速道路や空港、鉄道が帰省ラッシュで大混雑します。こうして家族や親戚が集まり、一緒にお祝いすることが何よりも大切な習慣になっています。

レバラン(Lebaran)——東南アジア特有の呼び方

「レバラン(Lebaran)」は、インドネシアやマレーシアなど東南アジアで定着している呼び名です。その語源にはいくつかの説がありますが、代表的なものは次のとおりです。

ジャワ語の「lebar(解放、終了)」や「lebar(広い、開放的)」から派生:断食が終わり、心も身体も解放される様子を表す。

土着の祭りとの融合:イスラムが伝来する前から存在した祭りや風習が混ざり合い、ユニークな呼称が生まれた。

日常生活での親しみやすさ

インドネシアでは公式には「イドゥル・フィトリ」と呼ばれますが、日常的な会話や家族間では「レバラン」という表現がよく使われます。庶民的で親しみやすい言葉として定着しているため、帰省の話題で「レバランの時期は渋滞がひどいね」などと口にするのが一般的です。マレーシアでは「Balik kampung(田舎に帰る)」という帰省文化もあり、同様に庶民的な呼び方として受け入れられています。

まとめ

イード、レバラン、イドゥル・フィトリは、イスラム教徒にとって欠かせない大切なお祭りを示す言葉です。呼び名が複数存在するのは、一見不思議かもしれません。しかし、その背景には言語や文化、歴史の多様性が色濃く反映され、各地で人々が大切にしている価値観や生活様式とも深く結びついています。

どの呼び方であれ、ラマダンの断食を終えた安堵感と、家族や周囲の人々との結びつきを強める点は共通しています。特にイスラム教徒の家庭では、一カ月間の努力を互いに称え合い、感謝や許しを言葉や行動に込めて表します。

もし海外旅行や留学、ビジネスなどでイスラム圏を訪れる機会があれば、現地の人々がどの呼び方を使い、どんな方法でお祝いをしているのかに注目してみてください。ちょっとした言葉遣いや行事の違いを知ることで、現地の文化にぐっと近づけるはずです。

kenji kuzunuki

葛貫ケンジ@インドネシアの海で闘う社長🇮🇩 Kenndo Fisheries 代表🏢 インドネシア全国の魅力を発信🎥 タコなどの水産会社を経営中25年間サラリーマン人生から、インドネシアで起業してインドネシアライフを満喫しています。 インドネシア情報だけでなく、営業部門に長年いましたので、営業についてや、今プログラミングを勉強中ですので、皆さんのお役にたつ情報をお伝えします。