イフタールは、ラマダン中に日没後に行われる断食明けの最初の食事です。この瞬間は、日本で言う夕食の時間に相当し、日の出から日の入りまで、具体的には夜明け前のお祈り(ファジュル)から日没時のお祈り(マグリブ)までの間、飲食を控えます。ラマダン期間中は、1ヶ月間にわたり、日の出から日没までの約14時間、飲食を一切せず、水やジュースなどの液体の摂取も含めて断食します。インドネシアでは、この期間を「プアサ」と呼び、日の出と共に始まる朝食「サフール」で一日が始まり、日没後には「ブカ・プアサ」として知られるイフタールで断食を終えます。
ラマダンは、イスラム暦の第9月にあたり、イスラム教徒にとって自己を浄化し、精神を高める重要な断食の期間です。この時期、彼らは日の出から日没まで、食事や飲み物を含むあらゆる物理的欲求を自制し、精神的集中と自己省察を促します。しかし、夜になるとイフタールが始まり、これは単なる食事を超えた、共感と共有の特別な時です。
世界最大のイスラム教徒の人口を持つインドネシア、特にマカッサルでは、ラマダン期間中の日常生活に顕著な変化が見られます。日中、飲食店は特定の時間帯にのみ営業し、カーテンで外からの視線を遮ります。夜になると、家族や友人が集まり、イフタールの準備が始まります。これは、断食の終わりを祝い、食事を通じて絆を深める貴重な瞬間です。
イフタールでは、身体を潤すために最初に水やジュース、スープを取り、次にデーツやゆで卵などの軽食で軽くお腹を満たします。デーツは高エネルギーで速やかに体力を回復させることができます。これらはすべて、長時間の断食で縮小した胃に配慮して選ばれ、その後に揚げ物や甘いものを含む豊富な食事が続きます。インドネシアでは、スパイスを利かせた料理やココナッツミルクを使用した甘いデザートが特に好まれます。
都市部では、イフタール・ビュッフェが社会交流の場としての役割を果たします。ホテルやレストランでは、ラマダン期間中に特別なイフタール・ビュッフェを提供し、人々は家族や友人と共に、様々な料理を楽しむことができます。これらのイベントは、異なる背景を持つ人々が一堂に会し、食事を通じて互いを知り、絆を深める絶好の機会を提供します。
そこで出される食事は、種類も多ければ、量も多いので驚きます。
例えば、マカッサルのクラロ(Claro)ホテルでは、150種類以上のメニューを楽しめるイベントが開催され、家族や友人と共に美味しい食事と交流の時間を過ごすことができます。日没前の17時過ぎから集まりだして、食べ放題メニューを皿にとって、自分の席にもっていきます。断食が始まる時間までは、食べることができないので、ひたすら自分が食べたいものを物色して、席に運ぶというなんとも奇妙な行為が続きます。
しばらくすると席には、ほんとうに全部食べ切れるのだろかというくらいの料理が並びます。
日本のビュッフェでは、食べたいものだけを席にもってきて、食べてから次の料理を取りに行くのが一般的ですが、インドネシアは、とにかくテーブルが料理いっぱいになるまで取り続けます。レストラン側もそれをわかっているので、次々に新しい料理が追加されていきます。
日没後の断食が終了する時間になると、太鼓がたたかれ、お祈りをしてから静かに食べ始めます。
豊かな食事が続くことで、ラマダン期間中に体重が増える人も少なくありません。長時間の断食後には、つい食べ過ぎてしまうことがあるのです。ラマダンで太る理由は豪華な食事にあるのかもしれません。
イフタールは、ただの食事の時間を遥かに超えた、深い意義を持ちます。自己反省、家族やコミュニティとの結びつきを強化し、すべての生命に対する感謝の気持ちを再確認する時間です。イスラム教徒でなくても、イフタールは異文化理解と平和への願いを深めるための貴重な体験を提供します。
ラマダンとイフタールはイスラム文化の核心をなす美しい伝統です。イフタールの豊かな文化とその背景にある意義を深く理解し、異文化への敬意と好奇心を育んでください。機会があれば、イスラム教徒の友人とイフタールを経験し、世界の多様性と寛容性を実感してみてはいかがでしょうか。