【インドネシア2020年4/6月期GDP5%減】 最悪な状態からチャンスを見極めるか
インドネシア中央統計局は5日、2020年4~6月期の実質国内総生産(GDP)が前年同期に比べ5.32%減少したと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞が響いた。同局によると、1999年以降、四半期ベースで初めてのマイナス成長を記録しました。
国内家計消費や投資がマイナス
同国財務省は4-6月期が3.5~5.1%落ち込むと予想していたが、これを下回った。
GDPの約6割を占める家計消費は5.51%減少、約3割を構成する投資もマイナス8.61%だった。各州政府が講じた行動制限や企業活動の縮小などの結果、消費や投資が減少した影響とのことです。
各州政府は6月以降経済活動を優先し、行動制限の一部緩和に踏み切りました。
中央政府は7~9月期から経済は回復に転じるとみていて、2020年の成長率は0.4%減から1%増の間で落ち着き、21年は4.5~5%増と成長軌道に戻ると予測しています。
インドネシアのコロナ感染は東南アジア最悪で経済回復は苦戦
しかしインドネシアでは新型コロナの第一波も抑えられていない状況です。
9日夜時点の感染者数は12万5396人、死者は5723人とともに東南アジアで最多です。
政府が景気刺激策を用意し、中央銀行が金利を数回引き下げた一方で、各州政府の行動制限の緩和が感染の拡大を招き、経済活動の停滞につながる悪循環に陥っているとの見方もでてきています。
ジャカルタ首都特別州における大規模社会制限(PSBB)の延長及び「安全で健康的、生産的な社会」に向けた移行期間を8月13日まで延長しました。
オフィスなどの事業所は出勤者数を全従業員の半数とし、半数は在宅勤務をする。
通勤・休憩・帰宅時間の重複を避けるため、出勤する従業員を2つ以上のシフトに分け、勤務時間帯に少なくとも2時間の差を設けるなど、
コロナウイルス患者の増加により自治体が社会的制限を維持することを余儀なくされ、経済は引き続き苦戦すると予想されています。
景気回復策も執行が20%
中央政府は6月、景気刺激策としてGDPの4%超にあたる約695兆ルピア(約5兆700億円)の国家経済回復プログラムを策定しました。
しかし予算の執行が20%程しか進まず、家計消費を裏打ちする購買力を後押しできていない。
ジョコ大統領は新型コロナ対策を優先せず、通常業務にとらわれていることの表れだと指摘し、予算項目の実現を急ぐよう指示したそうです。
インドネシアはいまだコロナウイルス感染者が毎日2,000人程増加しておりウイルスが収束する兆候はほとんどない状態だということです。
ウイルス感染の恐怖は、人々が通常の生活を完全に再開することに消極的になることを意味します。今のような「安全で健康的、生産的な社会」より長く続く必要があるでしょう。
インドネシアは内需国で、毎年の人口増を考えると、経済成長は最低5%以上増加しないと、失業者が増え貧困の人々が増えてしまう国です。世界経済が不況の状態であると、先進国からの援助も遅れ、金銭的な援助ができなくなってしまいます。
世界銀行は7月のレポートで、「見通しへのリスクは依然として深刻なマイナス面に傾いている」と述べており、しばらくはこの状態が続くものと考えられています。
中央銀行が異例の金融政策
インドネシア中央銀行は国が発行する約400兆ルピア(約3兆円)の国債を中央銀行が直接購入した上で、中央銀行は利息の受け取りを事実上辞退するなど異例の金融政策を続けています。
さらに、政府は177兆ルピアの国債を政策金利(年4.25%)の1%下回る利率で発行します。中央銀行は国債の円滑な消化のため、金利差の部分を負担します。
一連の対応を通じて、新型コロナウイルス対策で膨らむ政府の財政負担の一部を中央銀行が肩代わりする形です。
インドネシア中央銀行が国債を直接引き受けるこうした手法は「財政ファイナンス」と呼ばれます。
通貨の信認を損なうリスクがあり、放漫な財政運営にもつながりやすいのです。
加速する景気の悪化に歯止めをかける狙いですが、今後も追加策を迫られる可能性があるそうです。財政規律の低下や通貨安のリスクもつきまといます。
通常の金融緩和の手段である利下げも広がっている。インドネシアは2020年に入って既に3度実施して年4.25%になっています。
自国の通貨安が一服し、物価上昇率が鈍っていることも、中央銀行の利下げを容易にしています。インドネシアの通貨ルピアは3月に一時、1ドル=1万6600ルピア程度まで売り込まれましたが、今は1万4千ルピア台まで戻しています。
財政ファイナンスのような非常手段が際限なく拡大していけば、財政規律は失われます。
通貨安にもつながり、結果的に自国の経済が打撃を受けることになる恐れがあります。
新興国の高金利の正体
発展途上の新興国の多くは、借金国ゆえの高金利でもあります。国内資本の蓄積がなく、経済発展のためには海外マネーを借り入れる必要がありますが、高リスク国だけに、海外の貸し手あるいは投資家からは、プレミアムを加えた金利を求められます。首尾よく借金できれば、それを元手に輸出産業を育成し、輸出で得たお金で借金を返済していくのが、通常の経済発展パターンです。
しかし貿易赤字、経常赤字が拡大し過ぎたり、インフレになったり、景気の行く末に不安が出てくると、金融マネーの流入が鈍ります。資金繰りに窮すると、債務国ゆえのもろさが露呈します。
新興国の対外債務の多くはドル建てです。逆境に陥った新興国から、資金が流出して通貨安になるほど、ドルによる債務返済の負担が重くなります。その懸念からさらに資金流出が加速、通貨安…と、悪循環にはまるのです。こうして通貨安が続くと、今度は輸入インフレが高じてきます。
新興国中央銀行は、インフレ高進と、債務負担増の悪循環を阻止するため、利上げで通貨安を止めようとします。ところが、国内景況の悪化局面で利上げするので、さらに景気は悪化します。苦境にさらされて、政権は国民の支持を失い、政局も混迷。悪循環は幾重にも強化されてしまうのです。
まとめ
インドネシアを含め世界経済は、2020年度は非常に厳しい状況が続きます。2021年度にワクチン開発などで、コロナ感染が収束すれば再度経済が回復する前向きな意見もあります。
現状は各国の情報を収集しミクロとマクロで状況をしっかり把握して判断していくことで新たな商売や進出のチャンスを掴んではいかがでしょうか。