インドネシア中央統計局が11月5日発表した7~9月の国内総生産(GDP)は、物価の変動を除いた実質で前年同期より3.49%減りました。4~6月期の実質成長率は前年同期比マイナス5.32%だったので、2四半期連続のマイナス成長となります。
1998年のアジア通貨危機以来の景気後退局面に入った可能性が高いと一斉にメディアが報じています。
7~9月期はGDPの約6割を占める家計消費が前年同期に比べ、4.04%減っていて、投資も同マイナス6.48%と落ち込んでいます。
インドネシア政府は10~12月期の成長率をゼロかプラス転換と見込んでいて、2020年を通じてはマイナス1.7%~マイナス0.6%になると予測しています。
GDPの4%超にあたる695兆ルピア(約5兆円)の景気刺激策の予算執行により2021年の実質成長率を4.5~5.5%と見込んでいますが、そううまくいかなそうな雰囲気です。
インドネシアのジョコウィ大統領が10月、就任6年を迎えました。昨年の大統領選で再選し、同20日には菅義偉首相の初外遊を受け入れて国際社会との連携姿勢を示しました。
しかし、新型コロナウイルス対策では経済を重視して厳格な措置を取らず、感染が拡大してしまっています。
ジャカルタ特別州を含め、各州政府は新型コロナウイルスの感染抑制のため行動制限を続けていて、経済活動がなお制限されている状況です。
首都ジャカルタなど各地で行動制限が続いているものの、都市封鎖や外出禁止令は出さず、公共交通機関も運行しています。
しかし、国内の感染者は47万人、死者は1万5000人を超えており、いずれも東南アジアで最多になっています。死者はフィリピンの約2倍で、拡大が収まる気配はないようです。
タイやベトナムなどの近隣諸国は、感染拡大が比較的抑制されていることをみると、インドネシアでのコロナ対策はうまく機能していないようです。
景気対策としてジョコウィ大統領は外資誘致を促す制度一括改正(オムニバス)法に署名し、成立しました。
今後は同法の規制緩和により外国企業の誘致に力を入れる見込みですが、以前に比べ従業員の解雇要件が明確になり、過度な賃金上昇を抑える内容だと理解されているため、労働者団体がデモを頻繁に起こしており、反対の意見も根強いとのことです。
また、ジョコウィ大統領が2期目の目玉政策としたカリマンタン島(ボルネオ島)東部への首都移転も、計画の遅延が決まってしまいました。
ジョコウィ大統領は「経済を犠牲にするなら、数千万人の命を犠牲にするのと同じだ」と経済との両立を図る自身のコロナ対応は悪くなかったと強調していますが、抗議デモの対応に苦慮し、支持率低下に直面していてうまくいっていない模様です。
厳格な措置を取らずに感染者が増えたことで、将来の経済回復が他国より遅れる可能性が高く、インドネシア経済の先行きがかなり不透明となっています。