【イスラム金融】利子がだめ!イスラム諸国の独特な金融のしくみについて
三菱UFJの子会社バンクダナモンが「シャリアリース」と呼ぶイスラム金融の機能を活用して、金融規制で制限があった融資を使わずに資金供給を実現したとのことです。日本の銀行グループでシャリアリースと保証を組み合わせて提供するのは初めてのケースと注目されています。
三菱UFJフィナンシャル・グループがイスラム金融にのっとったリースをインドネシアで実行したと報道されました。インドネシア最大の病院グループであるシロアム・インターナショナル・ホスピタルズに対し、新型コロナウイルスの治療に使う医療機器などの提供で1700億ルピア(約12億円)の契約を結びました。
2019年5月1日三菱UFJ フィナンシャル・グループとバンクダナモン(PT Bank Danamon Indonesia,Tbk.)は連結子会社となっていました。
イスラム金融とは
イスラム教の国々では現在も、その教義によりお金を貸して利息を受け取ることが禁じられています。「自分で働かないで、お金を動かすだけで利益を得ることは良くない」という考え方です。そのためイスラム教の国では、企業が銀行からお金を借りて工場を建てる事や、人々が住宅ローンを利用して家を買うということができないそうです。そこでイスラム諸国では、イスラム金融とも呼ばれる独特の金融のしくみが考案されました。
イスラム金融とは、イスラム教における法律や規則を意味する「シャリア」にかなった金融取引を言います。
例えば工場を建てたいという場合、事業主がお金を銀行から借りるのではなく、イスラムの銀行が建築資金を肩代わりして工場を建てます。分割払いのかたちでそれを事業主に売り払います。銀行にとっては建築資金と売却代金の差額分が利益になります。日本の金融業者でいうと、リース業のしくみに似ています。お金を貸すのではなく物の代金を肩代わりするやり方です。
「利子」という概念が禁じられていることや、取引相手がイスラムの教義に反する事業(豚肉、アルコール、武器、ギャンブルに係わるもの等)を行っていてはいけない点など細かく審査があります。
イスラム諸国は産油国が多く、急速な経済発展を遂げている国もあります。そのため、イスラム金融の取引規模も近年拡大しています。
なぜ利子はイスラムの教義に反しているか
「利子(金利)」の禁止は、コーランに「リバー」を禁じる記載があることに基づいています。「リバー」とは、お金を貸すだけで増えて戻ってくる金利(利息)を指すもので、禁止される理由として、お金を貸す余裕がある社会的「強者」が、お金を借りる必要がある社会的「弱者」から、貸した金額以上を搾取するものであると考えられることや、不労所得にあたると考えられることが挙げられます。
その他、リターンを生み出す手段としての投資行為や賭博行為と考えられる取引や、金額や数量などの条件が不確実な取引も禁止されています。
イスラム金融の取引形態
無利子型金融として4つあります。
ムラーバハ(Murabaha)
ムラーバハとは掛売り型です。銀行が顧客の代わりに商品を購入し顧客に売却する方法です。割賦販売に似たスキームで、契約時点で商品の実物が存在することが前提になります。
イスティスナは、ムラーバハと似た取引形態ですが、契約時点で商品の実物が存在しない場合に用いられるスキームです。例えば、新築工場の建設など、契約時以降に完成する場合などが挙げられます。
イジャーラ(Ijara)
イジャーラは賃貸借契約です。銀行が建物や機械設備などを購入し顧客に一定期間リースする方法です。工場やビル、飛行機など大型商品に利用されています。
日本のリース会社と同じ考えです。
ムシャーラカ(Musharaka)
ムシャーラカは合弁事業出資型です。銀行と出資者が資金を出し合って共同事業を行い、その事業で得た利益を予め定めていた比率で分配する方法です。
ムダーラバ(Mudaraba)
ムダーラバは匿名組合出資型です。銀行が預金者や投資家から集めた資金を、事業者に投資しその事業で得たお金を、銀行、預金者や投資家、事業者で、予め定めていた比率で分配する方法です。
ムシャーラカと違って、預金者や投資家などの資金提供者や銀行は事業経営に参加しません。
スクークとは
上記無利子金融の4つの型から生じる収益を証券化したものを言います。
資産を特別目的会社(SPC)に譲渡し、SPCからスクークを発行します。投資家がスクークを購入して、集まった資金を資産の購入代金にあてる仕組みです。
投資家にとっては、リース料収入による収益率がスクーク購入時に確定しています。リース料が市場金利を参考に決定されているため、スクークは金利によって収益が計算されている債権とほぼ同一です。インドネシアと同じイスラムの国マレーシアで爆発的な増加しました。
まとめ
イスラム圏は、金融をはじめ色々な取引において、文化や教義が根底に存在します。
イスラムの無利子金融が、資本主義の有利子経済を駆逐して成長するとの見方があります。
インドネシアでもイスラム金融の商品やサービスを利用することも増えてくるため、今後イスラム金融がグローバル経済の一角として認知されつつあります。インドネシア進出で、イスラム金融の話も多く聞くようになり事前に仕組みを理解する事は大事といえるでしょう。