7月に日本政府は新型コロナウイルスの感染症対策および医療体制支援でインドネシア政府の要請で、20億円の無償資金協力と最大500億円の円借款を決定しました。
インドネシアのコロナ感染者数は8月31日現在17.2万人、死者数は7300人、アジア地域で最悪レベルとなっています。
8月に入っても1500人から2000人を超える勢いで増え続けるコロナの感染者と犠牲者数は、政権の最大かつ最も困難な政治課題となっていて国民の約90%が政府のコロナ対策に不満を抱いていると答えています。
コロナを目的とした日本からの巨額ODAは、政府にとってありがたい支援となっています。
感染拡大防止への援助は、インドネシアの社会、経済回復を助けるとともに、2000社を超える日系企業が展開する同国の経済を下支えして、日本への感染輸入予防や緩和においても重要であるとして意義を強調しています。
日本が1958年から実施しているインドネシアへのODAは、累計5兆7134億円に及びます(2018年度)。
これは日本のODA供与先としては、1位のインドで累計6兆150億円に次ぐ第2位の巨額援助国となっています。
2016年度まではインドネシアが最大援助国でした。
中国も日本からの約40年間にわたる中国への巨額ODA供与は累計3兆6500億円となり、2018年に終了し今日の世界第2位の経済大国の礎を築きました。
インドネシアが国交正常化30年を迎えた中国との経済の結びつきを強めています。
新型コロナウイルス拡大後も中国からインドネシアへの投資は堅調に推移し、貿易、支援も拡大基調にあります。
2020年1~6月期のインドネシアへの海外直接投資は、シンガポールの47億ドルに次ぐ規模で中国は24億ドルとなっており、シンガポールの投資は中国からの案件も多いため、実質的に中国が最大の投資国になっています。
中国はすでに貿易で日本に取って代わってインドネシアの最大の相手国になっています。
ODA援助も中国が目立つ一方で日本のODAは減少傾向にあります。
中国は広域経済圏構想「一帯一路」の一部としてインドネシアを重視しています。インドネシアの首都ジャカルタと近隣の主要都市バンドンを結ぶ高速鉄道の受注争いで日本にも勝っています。
中国が経済でインドネシアへの影響力を強めるのは安全保障での思惑もあります。
原油や天然ガスの世界最大の輸入国になった中国にとって、海上交通の要衝のマラッカ海峡を抱えるインドネシアはエネルギー安全保障でも重要です。
一方、インドネシア内では過度な中国経済依存を警戒する声があります。
貿易では中国製品を売り、投資も鉱業やインフラなど受注額が大きい分野に限定しているため、中国のインドネシア経済への貢献度は数字ほど大きくないと言います。
中国漁船がインドネシアの南シナ海での排他的経済水域(EEZ)への進入を繰り返すなどの理由で、対中感情は悪化しています。
ジャカルタバンドン間の高速鉄道計画は中国が受注するも、遅々として進んでいません。今年5月末にはインドネシア政府は中国主導の高速鉄道計画に日本を参加させたい意向を表明と報じていますが、日本には5月以降要請は来ていないそうです。
高速鉄道をめぐる一件は、日本が巨額のODA支援をしたにもかかわらず、インドネシアは日本を裏切るのかという声がでています。
日本がインドネシアにODAを始めて62年。2020年7月には世界銀行がインドネシアを上位中所得国として認定した。日本がODA対象の基準にしている一人当たりの国民総所得(GNI)も大幅に上昇しており、インドネシアは確実に経済成長しています。
インドネシアが今後、日本と中国でどちらの関係性を重要視していくのか、インドネシア政府の動きにも注目したいと思います。