キンタマーニ高原に来た目的は、この景色だけでなく、バリ島バンリ県で行われるこの地方独特の数年に一度の葬式のお祭りを見ることにありました。この儀式はウパチャラ・ピトラ・ヤドニャ (Upacara Pitra Yadnya)と呼ばれます。ピトラとは祖先のことであり、ウパチャラ・ヤドニャは宗教儀式を意味します。ピトラ・ヤドニャは、祖先や故人に対する供養と犠牲を捧げる儀式です。これは、故人の魂を浄化し、再生のサイクルに送り出すためのもので、バリ・ヒンドゥー教の五大犠牲(パンチャ・ヤドニャ)の一つです。
ヤドニャは5種類に分かれており、「Panca Yadnya(パンチャ・ヤドニャ)」と呼ばれています。パンチャとは「5」という意味です。その5つは以下の通りです。
ピトラ・ヤドニャ(Pitra Yadnya)は、バリ・ヒンドゥー教における重要な宗教儀式で、祖先や故人に対する供養と犠牲を捧げるものです。この儀式は、亡くなった人の魂を浄化し、次の世に進むための準備をするために行われます。バリ・ヒンドゥー教徒にとって、ピトラ・ヤドニャは宗教的義務であり、祖先崇拝の一環として非常に大切にされています。
ピトラ・ヤドニャの主な目的は、故人の魂が安らかに成仏し、再生のサイクルに送り出すことです。この儀式は、故人が生前に積んだ功徳を高め、悪行を浄化し、より良い来世を迎えるための重要な過程です。これにより、故人の魂はより高い次元へと進むことができると信じられています。また、ピトラ・ヤドニャは家族やコミュニティの絆を深める役割も果たします。儀式を通じて、家族や親族は一堂に会し、共同で故人を偲びます。この共同作業は、家族や地域社会の連帯感を強化し、祖先とのつながりを再確認する機会となります。
ピトラ・ヤドニャは、以下のような重要な意義を持っています。
このように、ピトラ・ヤドニャはバリ・ヒンドゥー教徒にとって非常に重要な儀式であり、故人の魂を浄化し、次の世に送り出すための重要な過程となっています。また、家族やコミュニティの絆を深め、先祖とのつながりを保つための重要な儀式でもあります。
ピトラ・ヤドニャは、いくつかの主要な儀式から構成されます。それぞれの儀式には独自の意味と目的があります。
これは最も有名な儀式で、火葬を行います。火葬は故人の魂を浄化し、再生の輪廻へと送り出すための儀式です。火葬の後、遺灰は聖なる川や海に散布されます。
火葬された遺灰や遺骨を収集し、浄化する儀式です。遺灰は通常、川や海に流されますが、その前に浄化の儀式が行われます。
遺骨や遺灰を海や川に散布する儀式です。これにより、魂が次の世に進むことができると信じられています。
これはコミュニティ全体で行われる儀式で、祖先の霊を慰め、家族やコミュニティの絆を強化します。
今回のピトラ・ヤドニャは、キンタマーニのあるバンリ県の5つのバンジャルが合同で儀式を行います。バンジャル(banjar)は、デサ(村)内での共同居住を原則とする地域単位です。デサ単位のものを含むすべての儀礼(ヤドニャ)の準備はバンジャルの成員が共同労働で行うため、バンジャルのメンバーシップなしにはバリ人は生きていけないといわれています。
ピトラ・ヤドニャの準備には多くの時間と労力が必要です。儀式の開催は通常、数年に一度しか行われませんが、その理由は準備にかかる費用と労力が非常に大きいためです。儀式の準備には、バンジャル(地域共同体)の全員が協力し、仕事を休んででも手伝いを行います。準備期間は通常2か月以上かかり、この期間中、バンジャルのメンバーは共同で儀式のための準備を進めます。
そんな前情報を得ながら、いよいよ儀式がスタートします。