トラジャコーヒーは、インドネシアのスラウェシ島、特にタナ・トラジャ地方で栽培される独特の香りと味わいを持つコーヒーであり、コーヒー愛好者や専門家からも高い評価を受けています。本記事では、トラジャコーヒーの味わいの特徴、生産地の魅力、インドネシアのコーヒー産業、トラジャコーヒーの生産方法、そしてトラジャコーヒーを楽しむ方法について詳しく解説します。
トラジャコーヒーの味わいは、そのフローラルな香りと柑橘系の爽やかな酸味、そしてカラメルのような甘い余韻を持つコク深い味わいで知られています。特にキーコーヒーのトアルコ・トラジャコーヒーは、米国やヨーロッパのスペシャルティロースターから高評価を受けており、特にキーコーヒーのトアルコ・トラジャコーヒーは日本でも非常に人気があります。
コーヒーの主な生産地として知られるインドネシアは、「コーヒーベルト（赤道をはさんで南北25度の地域）」に位置しています。気候が暖かく、肥沃で水はけの良い土壌を持つこの国は、コーヒー栽培にとって絶好の環境を提供しています。
特に、インドネシアのスラウェシ島、タナ・トラジャ地方は標高1,000mを超える高地に位置し、伝統的なトンコナンや美しい自然風景に囲まれた「天空の農園」で、アラビカ種が栽培されています。豊富な日照量と日夜の寒暖差が、コーヒー豆の品質向上に寄与しています。
インドネシアは世界有数のコーヒー生産国であり、Goodstatsのデータによると2021年のインドネシアのコーヒー生産量は、ブラジル、ベトナムに次ぐ世界3位の約76万5,000トンでした。コーヒー産業は全国で数百万人の雇用を創出しており、インドネシア経済にとって重要な役割を果たしています。17世紀には、オランダ軍によってアラビカ種がジャワ島に持ち込まれ、1830年頃にはプランテーションが広まりました。しかし1860年代から19世紀にかけてコーヒーノキが枯れてしまう病気「サビ病」が感染拡大し、またしても全滅してしまいました。その後は病気に強いカネフォラ種の栽培がメインに行われ、現在ではインドネシアで生産されているコーヒー豆の90％以上はカネフォラ種となり、アラビカ種の栽培は10％以下といわれています。
以前はインドネシア産の高品質なコーヒー豆はその多くが海外への輸出用で、インドネシア人が日常的に飲むのはコーヒーを粉にしてお湯を注ぐ「トブロック（粉コーヒー）」と呼ばれる飲み方です。
時代は変わり、現在はインドネシアにコーヒーブームが訪れています。国内産のコーヒーを取り扱うコーヒースタンドやカフェも増えており、都市部とその郊外ではどこに行ってもおしゃれなカフェで安定した品質のコーヒーが飲めるようになりました。
トラジャ地方のコーヒー生産は、小規模農園が中心となっています。完熟豆のみを手摘みで収穫し、欠点豆や不純物を手作業で取り除き、精製にはウォッシュド製法とスマトラ式が採用されています。これにより、豆のクリーンな味わいと独特の風味が保たれています。スマトラ式は、主にスマトラ島のアラビカ種で行われる伝統的な精選方法であり、雨が多いスマトラ地域の特性を活かし、早く乾かすことで独特の風味を生み出しています。
トラジャコーヒーは、そのバランスの良い酸味、力強いコク、シトラス系のきりっとした酸味と完熟したマンゴーやパイナップルのような香り、そしてカラメルのような甘さが特徴です。これらの特徴は、コーヒー愛好者や専門家からも高く評価されており、インドネシアのコーヒー文化を象徴する存在となっています。
トラジャコーヒーは、インドネシアの美しい自然と伝統文化を感じさせる特別なコーヒーであり、その独特の風味と高品質な豆は、コーヒー愛好者にとっては外せない存在と言えるでしょう。スラウェシ島のタナ・トラジャ地方の美しい風景とともに、このコーヒーの魅力を再発見する旅は、まさに心を揺さぶる体験となるでしょう。