バリ島の雨季といえば、シトシト降り続ける雨や突然のスコールを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、実際には雨が降り続けるわけではなく、どんよりした雲の切れ間から、ふと青空が顔を出す瞬間があります。その一瞬の晴れ間は、まるで自然からの贈り物のように特別で、目の前に広がる空の青さが心に染み入るのを感じます。そんな束の間の晴れ間を見つけた日、じっとしていられなくなり、私は外へと飛び出しました。行き先は、クタ地区の静かなジャーマンビーチから、賑わいのあるクタビーチまで。雨季の風に吹かれ、海を眺めながら歩く時間は、日々の忙しさやストレスを忘れさせてくれる、心安らぐひとときでした。
雨季のバリ島は、天気の移り変わりがまるでドラマのよう。早朝にどんよりとした灰色の雲が広がっていても、突然雲が切れ、青空が見えることがあります。スコールが過ぎ去った後の空は澄み渡り、まるで雨が洗い流したかのようにクリアな青さが広がるのです。
特にこの時期は偏西風が強く吹き、西から東へと雲が流れていきます。晴れている時間もそう長くはありませんが、その限られたひとときが余計に愛おしく感じられます。気温もそこまで上がらず、南国とは思えないほど涼しさを感じる日もあります。
私はそんな青空が見えた瞬間に、急いで外に出て海へと向かいました。気まぐれな空模様だからこそ、晴れ間を見逃すわけにはいきません。
まず足を運んだのは、クタ地区にあるジャーマンビーチ。観光客で賑わうクタビーチのすぐ近くにありながら、ここは驚くほど静かで落ち着いた場所です。ベンチに腰を下ろし、目の前に広がる海をただぼんやりと眺めます。
耳に届くのは、波が静かに砂浜を洗う音と、遠くを吹き抜ける風の音。そんな自然の音に包まれるだけで、いつの間にか心の中が整っていくのを感じました。人が少ないこのビーチでは、まるで時間がゆっくりと流れているかのよう。
リゾート地の賑やかさから少し距離を置き、波の音に耳を傾けていると、自然と深呼吸がしたくなります。「何もしない贅沢」を味わえるこの場所は、まさに雨季の晴れ間にぴったりのスポットでした。砂浜に目をやると、少し湿った砂の上に、小さな貝殻が無数に転がっています。波打ち際を歩けば、足元にひんやりとした海水が触れ、その心地よさに思わず笑みがこぼれました。
ジャーマンビーチで静けさを満喫した後、そのまま海沿いを歩いてクタビーチへと向かいました。
クタビーチに近づくにつれ、徐々に聞こえてくるのはサーファーたちの笑い声や海に飛び込む音。ここは観光客や地元の人々で賑わい、活気に満ちた場所です。波打ち際では、サーフボードを抱えた人たちが次々と波に乗り、見事なライディングを見せてくれます。その姿を見ているだけで、こちらまでエネルギーが湧いてくるような気がしました。
サーフィンに挑戦する人、ビーチでくつろぐ人、子供たちが砂遊びをする姿――賑やかな光景は、ジャーマンビーチの静けさとは対照的ですが、どちらにもそれぞれの魅力があります。バリ島の海は、訪れる人すべてに異なる過ごし方を提供してくれるのだと感じました。
次第に空には灰色の雲が広がり始め、遠くで風の音が強くなってきました。雨季の天候は本当に移り変わりが早いものです。先ほどまでの青空はどこへやら、再び雨が降りそうな気配が漂い始めました。「もう少しだけ」と思いながら、最後のひとときを惜しむようにビーチを歩きます。雨が降る直前の空は独特の美しさがあり、青と灰色が混ざり合う光景は、どこか神秘的です。自然の力強さを感じながら、その美しい一瞬を目に焼き付けました。
雨季のバリ島は、晴れ間が少ない分、その一瞬の青空がより一層美しく感じられます。どんよりとした空から突然広がる青空、心地よい風、そして海の音、どれも日常ではなかなか味わえない、特別な時間です。静けさに癒されるジャーマンビーチと、活気に満ちたクタビーチ。対照的な魅力を感じながら過ごす散歩の時間は、雨季ならではのバリ島の楽しみ方だと実感しました。雨季の一瞬の晴れ間を見逃さず外に出て自然と触れ合いを楽しみ、気まぐれな天候が生み出す、心に残る美しい時間を体験することができました。