バリ島での滞在を終え、マカッサルへ戻る日はいつも少し名残惜しいものです。今回は、雨季ならではの気まぐれな天候と、ライオンエアの厳しいオペレーションスケジュールが重なり、なかなかの試練となりました。当初は夕暮れ時の美しいオレンジ色に染まった空を眺めながらのフライトを想像していましたが、待ち受けていたのは3時間のディレイと真っ暗な夜空。それでも、飛行機が離陸してしまえば、バリ島からマカッサルまではあっという間。雨季の夜、世界一過酷な遅延を乗り越え、マカッサルへと戻るフライトを振り返ります。
本来なら夕方の心地よい時間帯に離陸し、ほのかな夕陽を拝みながらの空路を楽しむはずでした。しかし、デンパサール空港で待ち受けていたのは、機材遅れによる3時間のディレイ。早めのフライトを選んだのに、結果としては最終便と大差ない時間にマカッサルへ到着することに。ライオンエアのスケジュール管理や情報提供の不十分さに、不満が募るばかりです。
時計の針が19時を回った頃、ようやくボーディングがアナウンスされました。すでに辺りは真っ暗で、夕景を楽しむどころか、心はすっかり疲れモード。それでも「やっと出発できる」という安堵感が、失われかけていた旅の余韻をほんの少し取り戻してくれます。
ボーディングブリッジはなく、バスでの移動かと思いきや、なんと歩いての搭乗。
一列通路に3-3配列、39列ものシートが並ぶB737-900ERの機内へ、200人超の乗客がそれぞれ大きな手荷物やお土産袋を抱えながら慎重に席を探す様子は、まるで迷路のようです。前後左右、窓側通路側といった並び順はお構いなし。スムーズな搭乗を考慮したオペレーションは感じられず、キャビンアテンダントも積極的に誘導する様子はありません。
本来7Kgまでの手荷物制限も有名無実化しており、上部の荷物棚はあっという間に満杯。後から搭乗した人たちは、自分の座席近くの棚が使えず、通路で立ち尽くしている始末。ドアクローズまで1時間近くかかるのも当然で、こうした状況が遅延をさらに拡大させる原因になっているように思えます。
ライオンエアはLCCとして、一日中ぎっしりフライトを詰め込み、1便の遅れが夜まで尾を引くのは日常茶飯事。朝から少しずつ生じた遅れが、夕方には3時間まで拡大するのも珍しくないため、夜の便はほとんど定刻運航が期待できません。
さらに、機内を見渡すと、ランプカバーが外れたままの座席があったり、20年近く飛び続ける古いB737-900ERばかりが運用されていることに、安全面の不安を覚えます。このような状況では、「世界一最悪な航空会社」という評判も頷けてしまうのが残念なところです。
ようやく離陸すると、先ほどまでのゴタゴタが嘘のように、マカッサルまでは約1時間の短いフライト。すでに疲れている乗客たちは静かで、機内には落ち着いた雰囲気が漂います。雨季の夜空を突き抜けるように上昇していくと、窓の外は点々と光る地上の灯りだけが見える暗闇。夕焼けを期待していただけに、少し寂しい気持ちは否めませんが、これもまた経験と自分を納得させます。30分もすると降下が始まり、45分後にはシートベルトサイン点灯。
マカッサルの夜景が下に広がり、バリ島とはまた異なる生活のリズムが感じられます。バリ島でのリゾート気分から一転、マカッサルの地に戻ると、やはり「ホーム」の安心感が漂ってきます。
マカッサル到着後も、ボーディングブリッジは使用されず沖止めでバスに乗り換え。長い待ち時間やオペレーションの不備に苛立ちつつも、無事帰ってこられたことに一息つきます。
いつでも気軽に行けるバリ島は、マカッサルに滞在する大きな特権です。観光地に長期滞在するより、行きたい時に行ける自由さを享受できるこの距離感は、性に合ったスタイルです。ライオンエアの困難なオペレーションに文句を言いながらも、バリとマカッサルをつなぐ空路は、私にとって欠かせない存在なのです。21時を過ぎた夜の空気を感じながら、家路へと向かう途中次回のフライト選びはもう少し慎重にしたいという反省も胸に刻みつつ、無事帰って来られた安堵感が、疲れた心に少しずつ染み込んでくるのでした。