東南アジアで漁獲される、世界最大のシャコであるトラフシャコをご存知でしょうか。シャコというと昔から日本人では寿司ネタとして食べられてきましたが、最近めっきり食べる機会が少なくなっていましたが、インドネシアでトラフシャコを食べてからは、ロブスターやマッドクラブを超える最高のご馳走となります。あまり日本では馴染みの無いトラフシャコについてお伝えしたいと思います。
エビのような見た目が印象的なシャコは、以下のような特徴をしています。
エビやカニと同じ甲殻類に属しているシャコは、他の甲殻類と同じく、体の構造は頭部・胸部・腹部に分かれています。また、脚力が非常に強いそうで貝類の硬い殻を一撃で粉砕してしまうほどの威力となります。
シャコの中でもトラフシャコは最大で40cmくらいにまで成長するそうで、世界最大のシャコと呼ばれています。日本で見かける真シャコ(オラトリア)は最大でも20cmほどまでしか成長しないので、トラフシャコは真シャコの2倍近くの大きさとなります。
シャコといえば、見た目がどうしてもカマキリ虫に似ていてエビやカニと違いなぜかマイナーな感じを受けてしまいます。世界的には、マンティスシュリンプと呼ばれています。マンティスとは英語でカマキリの意味となります。カマキリエビの名前の通りカマキリのような鋭い武器を持っていて、なかなか捕まえるのも難しそうです。トラフシャコは胴体が黒と白の縞々模様が特徴で、最初にトラフシャコを見た時にはこれが美味しいシャコとは思わず、かつて水族館で見たような思い出しかありませんでした。日本で食べているシャコは元々黒っぽい色をしているイメージですので、縞模様が違和感でしかありません。
主に関西を中心に今でも寿司ネタなどでシャコが食べられているそうですが、関東に住んでいるとシャコがほとんど食べられないので、シャコの味自体を忘れてしまっていました。ボイルしてしまうとエビとほとんど一緒の味で、しかも日本産が少なくなってほとんど中国産の輸入物になってしまって、値段の割にはおいしくないという認識にすらなっています。
日本でも高級食材のひとつになりつつあるシャコですが、単純に資源量が減少しているのも高値の一因ですが、流通が困難でコストがかかるためどうしても値段が張ってしまいます。シャコは一旦死んでしまうと、殻の下から酵素を分泌して自分の身を溶かしてしまう性質を持っています。酵素によって、身が痩せてしまい美味しさも失われてしまいます。身痩せを防ぐためには、生きている状態で茹でる必要があります。シャコの産地で漁獲されたらすぐ茹でてから流通させる必要があるので、産地から消費地までの流通を確保する必要があります。遠隔地であれば茹でた後に冷凍して運ぶこともできますが、どうしても味が落ちてしまいます。
そこで、インドネシアでは、空きペットボトルを利用して空輸で生きたまま流通させることが行われています。漁獲されたシャコがペットボトルに収まっている姿を見ると愛らしいですが、シャコの身痩せを防ぐためには、こうするしかありません。一旦シャコが死んでしまうと味が一気に落ちてしまうため、漁師の知恵と言っても良いでしょう。
マカッサルのレストランでも、滅多に見ることが出来ないトラフシャコですが、日本からの来客があったので、産地から工場に直送してもらい、レストランに持ち込んで調理してもらうことにします。
いつもの馴染みのお店に話をしたら快諾してもらえましたが、シャコは調理したことないといわれてしまいました。どう調理するか尋ねられたので、素材の味を楽しむには、余計な味を付けずに、塩を振ってもらい素焼きでお願いしました。早速、焼き上がったシャコ2尾が来ました。
皿からはみ出るほどの大きさとなります。エビのように殻を剥がしながら実食しました。エビの食感とカニの旨さを足したような甘みがあります。おそらくカニ、エビ、シャコを同時に食べると、シャコの甘みが一番あるように思います。パンチのある甘みではなく、とても上品な甘みが口に広がってきて、思わず笑みが出ます。トラフシャコはすばらしい食材であるのは確かで、見た目以上に甘みと旨さがあり、体格が大きい分ボリュームたっぷりです。
マカッサルまで送ってもらった値段が1,700円/Kgとなります。インドネシアでも魚介類の中ではロブスターの次に高い値段がつく最高級品となります。仮に日本に送ったら3,000円以上になってしまうので、トラフシャコをレストランで食べたら1万円/Kg以上になりそうです。こんなトラフシャコを格安で食べられて本当に幸せです。是非インドネシアに来たら、ロブスターやエビも良いですが、トラフシャコがあれば、是非試していただきたい食材です。