日本はGW中ですが、ご存知の通り5月1日はメーデーです。インドネシアではメーデーのため祝日となります。インドネシア・ジャカルタも毎年大規模なデモ行進が行われます。
本日は、あまり知られていないメーデーについてお話します。
メーデーとは、国際的な労働者の日です。メーデーは、英語で書くとMay Dayです。ヨーロッパでは「夏の訪れを祝う日」として古くから祝日でした。1886年の5月1日アメリカのシカゴで、8時間労働制要求したことに由来するそうです。
それ以降、労働者たちが集まり、権利を主張する日として5月1日を「労働者の祭典」として祝日とする国も多く、世界中で労働者たちのイベントやデモ行進などが行われています。
インドネシアでも2014年にユドノヨ政権下で5月1日が祝日となりました。例年メーデーでは、ジャカルタなどの主要都市でデモや集会が行われており、今年もコロナ禍ではありますが、インドネシア労働組合総連合(KSPI)などによる総勢5万人規模の大規模なデモが計画されています。
ジャカルタ特別州では大統領宮殿や憲法裁判所の周辺で集会を行う計画で、雇用創出オムニバス法撤廃のほか、最低賃金の上昇を求めるようです。
メーデーは事前にわかっている計画デモであり、祝日のため会社が休みとなっていて、あまり混乱はなく比較的安全なデモなのですが、道が封鎖されたり、高速も封鎖したりして渋滞が起きます。在インドネシア大使館もデモには近づかないようにと注意喚起されます。
1886年5月1日に、シカゴで行われたゼネラル・ストライキでは1日12時間から14時間労働が当たり前だった当時、「8時間は労働、8時間は休息、そして残り8時間は自分たちの自由な時間のために」を要求したのが、今の私たちに受け継がれています。
労働者の時間が最も搾取されていたのは、19世紀半ばごろと言われています。産業革命によってさまざまな技術革新が起こり、工場や機械を持つ資本家が労働者を雇い、モノを作って売るという資本主義が生まれて、人間の労働時間は劇的に長くなりました。
なぜ、労働時間が長くなったというと理由は明白で、資本主義の根本的な考えでは、一定の賃金で高い生産性を上げるためには、「より多く働いた方が生産性は高くなる」と考えられていたからです。
しかし、これだけ働く時間が長いと、健康被害や能率低下、人間としての生活の崩壊などの弊害は免れません。そこで、こういった劣悪な労働条件を改善しようという動きが、世界各地で起きはじめたのです。
その後、労働時間を短縮し長時間労働を1日8時間にすることで、生産性が上昇するという実験結果が出たのです。これはいくら機械の働きが大半を占めたとしても、それを扱う労働者の「能力と努力」によって生産性が大きく左右されることを意味していました。
1919年のILO第1号条約にて、8時間労働が採択されたことによって、世界のスタンダードとなりました。日本でも、1947年に労働基準法が制定されて以来、8時間労働が行われるようになりました。
現在の8時間労働は、当時の彼らから見たら、現代の労働環境は理想だったのではないでしょうか。8時間労働制は工場労働者や農作業従事者などの、物理的に拘束されるような仕事をベースにして考えられた制度です。8時間労働が主流になってから現在まで、その時間や条件が大きく変わることはありませんでした。
しかし、インターネットの出現によって、働き方が多様化している現代から見ると、産業が多様化し、情報通信産業などが増えてきている今、8時間である必然性が薄れつつあります。現代の技術の効率性をもってすれば、昔と同じ仕事量をわずかな時間でこなせるはずです。それなのに、なぜか1世紀以上前と変わらず1日8時間働いているのです。
『仕事と生活の調和』を考えるワークライフバランスが叫ばれてきました。最近は、これに社会とのつながりをプラスした『ワークライフバランスソーシャル』という考え方が生まれつつあります。資本主義社会から生まれた8時間労働が変わる社会。それは、新たな社会のはじまりなのかもしれません。