日本の夏といえば、「流しそうめん」が思い浮かぶ人も多いでしょう。お箸でスライドするそうめんを捕まえ、さらっと口に運ぶあの感覚。ほんの一瞬の冷たさが、この熱い季節をちょっぴり楽しくしてくれますよね。今回は、そんな日本の夏の風物詩、流しそうめんがマカッサルに上陸したお話をお伝えします。
流しそうめんの発祥は宮崎県高千穂町で昭和30年の頃暑い夏の野外で、そうめんを茹でて、竹を半分に割って高千穂峡の冷水でそうめんを流して涼を得たことが始まりと言われています。日本人なら誰もが一度は経験したことがあるでしょう。しかし、海外の方々がそうめんを水で流して食べるという体験をする機会はほとんどないでしょう。これまでマカッサルで流しそうめんをするという発想はまったく無かったのですが、ある方との出会いで実現することができました。
海外という場は人の出会いを導いてくれます。特にマカッサルは日本人が少ないということもあり、なにか縁をもたらしてくれる場所です。これが直接的な偶然の出会いではなく、その方の知り合いの方まで縁が波及するから不思議ですが、そこで「陽太さん」という、常に周囲を明るく照らすような方と出会ったことが、流しそうめんのマカッサル開催の発端でした。
今回の主人公である「陽太」さんは、幼いころから地域の方と密に交流してきた経験から「笑顔が笑顔を生む連鎖を信じています。大学生のときに毎日登校で苦しめれられた坂で思い出の溢れる坂にしようということで、この坂で「流しそうめん」をすることを思い立ったそうです。大学側や行政などの長期に渡る交渉の末、500名ほどの参加者を呼び笑顔のひまわりを咲かすことができたそうです。その後も大学公認の流しそうめんサークルを結成し、クラウドファンディングで日本一周流しそうめんを実行してきました。その後も流しそうめん活動は続き、今度は世界中で流しそうめんをして笑顔をつなげたいとの願いを私に打ち明けました。そこで、そのスタート地点としてマカッサルを選んでいただくことになりました。
本格的な流しそうめんをするには、やっぱり本物の竹を使用するに限ります。しかし、竹の調達や洗浄などの準備に一苦労するとのことで、雨樋で行うのが最適だろうということで、マカッサルのホームセンターに足を運びました。インドネシアの家屋には雨樋などがついていることは少なく、雨樋が売っているかどうか半信半疑でお店の人に訪ねたところ、店の棚の一番上の目立たないところにありました。
4mの雨樋はコの字型になっていて流しそうめんには最適な感じです。4mの長さだと車に入らないので半分の2mで切断してもらいました。
また、そうめんを流すための飲料水「アクア」のガロンと蛇口付きのウォータータンクを2個購入し、流した水を受け止める作戦です。準備に苦労すると想いましたが意外と簡単に流しそうめん装置が手配できました。
早速流しそうめんのセッティングです。雨樋を洗剤で綺麗に洗浄したあと、机と椅子を使って雨樋を設置していきます。何度か水を流して実験して、そうめんが流れやすい傾斜を見つけます。
雨樋が4mあるのでなかなかの迫力です。流しそうめんの準備ができたところで、そうめんを茹で上げていきます。マカッサルのスーパーで調達した素麺はお湯に入れた瞬間に折れてしまうほど針金のように細くて茹でるのが大変でしたが、実際のそうめんを雨樋に流してみたところ、水とそうめんがうまく流れた瞬間!笑顔の輪がひろがりました。
スタッフを呼んできて、流しそうめんパーティの始まりです。日本人の場合は、薬味にネギとわさびが定番ですが、インドネシアでは輪切りにしたチャベ(Cabe)と呼ばれる唐辛子が大人気です。普段使い慣れていない箸で流れてくる麺をすくうので、最初は苦労していましたが、うまく箸にそうめんを乗っけて楽しそうに食べていました。
おそらく、インドネシアのスタッフは流しそうめんは初めての体験で日本文化にふれる貴重な時間となりました。新たな文化に触れ、それを楽しむスタッフの様子を見て、私たちは流しそうめんの可能性を再認識しました。
この体験を通じて、「世界を笑顔にしたい」という想いが具現化され、流しそうめんの海外での無限の可能性を感じました。流しそうめんを通じて笑顔が生まれ、その笑顔がさらなる笑顔を生む。その連鎖をこれからも続けていきたいと思います。