我々日本人には、必ず姓と名がありますが、イスラム教を信仰する大半のインドネシア人には個人の名前しかありません。つまり、苗字に相当する家族の名前がないのです。
インドネシアは世界で最大規模の姓がない国と言えます。
本日は、インドネシア人の名前について解説したいと思います。
姓、苗字というものがありません。つまり公的には家族名がないことになります。
各家庭において、生まれた子供に全て同じ名前を1つつけるという場合はありますが義務ではありません。また、民族によってその民族の姓にあたる名前を持ち、代々継承する場合で同じ名前をつける場合もありますが、こちらも任意で姓にはあたりません。
名前の意味を並べると、男性は倫理や道徳的側面が強いのとは対照的に、女性は美しさの願望が強いことも印象的です。
名前の数も制限がありません。5つ以上ある名前もあれば、1つしかない名前の方もいます。
日本人は、姓+名前、欧米では、ファーストネーム+ミドルネーム+ファミリーネームといった名前が一般的ですが、インドネシアではそういった形式ではありません。
タレントのデビィ夫人の旦那さんであるインドネシアの初代大統領の名前は「スカルノ」(Soekarno)と1文字だけです。
インドネシアの友人や知人では、本名の他に名前の一部を使用した呼び名を持っています。友人が呼ぶ呼び名と、家族が呼ぶ呼び名をそれぞれ持っています。
初めて会う場合は、なんと呼べばよいですか、と尋ねる事も多いです。
アディ(Adi)さん、スリ(Suri)さんなど、結構呼びやすい名前が多いのですが、たまに同じ名前がかぶってしまい誰のことを言っているのかわからなくなる場合もあります。
苗字に相当するものがないので、結婚しても名前は変わりません。つまり夫婦別姓問題はインドネシアではありません。
日本では現在、夫婦別姓は公式には認められておらず、結婚した場合は夫婦いずれかが姓を変えて相手の姓を名乗らなければいけません。ただし、日本人同士の場合に限ってであり、外国人と結婚した場合は対象外です。
そんな現在も度々議論になっている夫婦別姓ですが、インドネシアでは名前しかないので、議論も起きません。
インドネシアでは名前のしかも短い呼び名を使う事が多いので、身分証明書に書かれている正式な名前は長く複雑な場合が多いです。まったく呼び名と異なる場合もあるので、長年つきあっていても、正式な名前を知らないということが多々あります。
実は、インドネシア以外にも姓がない国がいくつかあります。モンゴル、ミヤンマー、イスラエル、エチオピア、カンボジアなどは名前しかありません。
日本に来て、外国人登録証を作る時、どうしても姓と名が必要になった場合、結構困るようです。その場合は、父の名前を姓代わりにするとうこともあるそうです。名前が1文字しかない場合は、姓を空欄にする訳にもいかず、苦肉の策といえそうです。
インドネシア人は姓で呼ぶ習慣もないので、私達外国人も名前で呼ぶ事が多いです。
私も名前がケンジなので、インドネシアの人たちの呼び名は、「ケンジサン」と呼ばれています。初めて会う場合の自己紹介も姓を名乗ることは必要ないので、名前で「ケンジ」です、とだけ言えば相手は理解してもらえます。
親しい友人以外で、年齢や役職地位、先輩後輩などにとらわれず、初めて会った人に名前を呼び合うことに慣れていない日本人にとって、インドネシアで気軽に名前や呼び名で話をすることで最初は戸惑いますが、すぐに仲良くなれる名前文化も最近良いなと感じています。