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(第5回)ナトゥナはインドネシアにとって大事な国境の島

南シナ海に浮かぶナトゥナ島は、水産業を盛り上げようと必死です。国境に近いナトゥナ近海における新たな火種は、漁業で解決していく方針です。

ナトゥナの道路はきれい

南シナ海に浮かぶインドネシアのナトゥナ諸島。

ラナイはナトゥナ島最大の町ですが、美しいビーチには人影もなく、
「のんびり」という言葉はこの町のために作られたかと思えるような静かな町です。

ラナイの町では車やバイクが多く走っていますが、島内の車の数は多くなく、島の信号はラナイの町中に2カ所しかありません。

島の北部の町や南部の町に行くのに1時間走ってもすれ違った車の数は10台に満たない位の走行量です。

もちろん、この島の中は渋滞という言葉はありません。

インドネシアの道路は、舗装がはがれて、ぼこぼこ穴がたくさんあり、
車にのっているだけでも疲れる事が多いのですが、
ナトゥナ島をめぐる主要道路はきちんと整備され、きれいで平らな舗装で車は非常に走りやすく快適です。

島には川が複数あり道路に橋がかけられていますが、橋はコンクリートで非常に頑丈な造りとなっています。

たまに、軍用トラックが行き来していて、島のいたるところで、軍用施設とその軍人用の住居を見る事でできます。

ここまで島の道路インフラにお金をかけるのには、インドネシア政府のナトゥナ島に対する投資への執念が見て取れます。

ナトゥナの領有権問題は存在しないが

インドネシア側は「(島の)領有権問題は存在しない」としつつも、海空軍施設の強化を計画するなど警戒を強めています。

島の主な産業は、漁業であり、ナトゥナは漁業や水産業の育成にも力を入れています。

ナトゥナ諸島近海は好漁場として知られています。

この海域で中国漁船がたびたび違法操業していたため、
2016年8月には、レーダーを備えた違法漁業の監視施設をラナイの軍基地に併設しました。

2017年インドネシア政府は周辺海域を「北ナトゥナ海」に呼称変更して地図に記載したのをうけて、日本政府も2017年1月、中国の海洋進出を牽制するため、安倍晋三首相がインドネシアを訪問して、ナトゥナ開発への支援を表明しました。

一方中国は2019年12月に中国の漁船団が中国海警局の警備艇を伴ってナトゥナ諸島近海で操業。インドネシア側は中国大使を召喚して強く抗議したが、中国側はナトゥナ諸島周辺海域に歴史的権利を有しており、合法的かつ合理的な操業であると反論したそうです。

インドネシアは2020年1月に、軍艦8隻と戦闘機4機をナトゥナ諸島周辺に配備し哨戒にあたっています。
これらにより、ナトゥナ諸島の駐留兵力は約4000人となりました。

なぜ火種となるのか。

ナトゥナ周辺海域は海洋資源に富み、インドネシアの排他的経済水域(EEZ)のぎりぎりのところにある東ナトゥナ海のガス田は世界最大級の埋蔵量を持つと言われています。

インドネシア側が問題にしているのは、中国が南シナ海での領有権主張のために設定した「九段線」が、ナトゥナ諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)と重複する点です。

中国が南シナ海を支配した後、海底・水産資源が豊富なナトゥナ諸島に触手を伸ばすことを警戒しているということです。

南沙諸島における南シナ海の領有権争いは、長年中国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイで領有を主張していて、インドネシアはこれまで、南シナ海の領有権問題ではそれらの国の仲介役を買って出ていた。

ところが、ナトゥナ諸島が領有権問題の新たな舞台となれば、立場は微妙になるということです。

ナトゥナ諸島は、領有権問題で新たな火種になるとは想像しにくいですが、現地ではそれを懸念する声が多い。
ナトゥナの漁民は、
「ここ数年、軍の存在感が高まっていることに気づきました」
「私たちは島で多くの軍人に会います。私たちの島は国境にあるので、彼らはここにいると思います。中国や他の国々からの脅威があるからかもしれません。」と言っています。

ナトゥナの静かで美しい海をみていると、そんな雰囲気は微塵も感じません。
この島にいてもこのような火種が存在するようには思えません。

安定と繁栄

漁民の前で演説する国防大臣

しかし、インドネシア政府は、インドネシアと中国が南シナ海で衝突しないこと、そして両国がこの問題を外交的に解決することを主張しています。

インドネシアの外相は、「実際に積極的に攻撃するつもりはないかもしれない」と語っています。
領土を守るために軍事の増強によって島を武装するという事について誤算であると主張します。

今までナトゥナは領土問題もなく安定した土地であり、ナトゥナの人々をみていると、治安も良く安全に安心して暮らしているのですが、
実はインドネシアと中国との間の潜在的な衝突の最前線に立っているということは、まぎれもない事実です。

現在のところ軍事的な衝突の可能性は低いように思われるかもしれませんが、インドネシア政府は国境を安全に保つようにしながら、微妙なバランスをとる必要があります。

まとめ

インドネシア政府としては、ナトゥナに漁港や漁船を整備し、何百人もの漁師を派遣して、漁業を発展させ、島の経済を伸ばすことが最需要課題となっています。

ナトゥナ諸島でみんなが安心して漁業ができ、豊かな生活になるように、微力ながら協力していきたいと考えています。

kenji kuzunuki

葛貫ケンジ@インドネシアの海で闘う社長🇮🇩 Kenndo Fisheries 代表🏢 インドネシア全国の魅力を発信🎥 タコなどの水産会社を経営中25年間サラリーマン人生から、インドネシアで起業してインドネシアライフを満喫しています。 インドネシア情報だけでなく、営業部門に長年いましたので、営業についてや、今プログラミングを勉強中ですので、皆さんのお役にたつ情報をお伝えします。