インドネシアは、環太平洋火山帯に位置する島国であり熱帯の高温多湿な気候に覆われていることから、地震・津波や火山噴火、洪水、土砂災害など、日本と同様に大小多様な自然災害が頻発する国です。
英国の危機管理分析会社ベリスク・メープルクロフトは、世界の576都市を対象として行った自然災害に対するリスクについての報告書を公表し、インドネシアの首都ジャカルタは主要都市の中で最も自然災害に対して脆弱な都市であると発表しました。
ベリスク・メープルクロフト(Verisk Maplecroft)によると、アジアの都市は、大気汚染、極度の暑さ、気候変動、自然災害などの最大のリスクに直面しています。最も危険にさらされています。トップ10の都市はすべて、インドネシアかインドの都市となっています。
ジャカルタは特に大気汚染、地震、洪水に対するリスク評価で低評価となっています。国内の他の都市では、バンドンやスラバヤも世界で最も自然災害に対して脆弱な都市10位の中にランクインしています。
2020年にジャカルタ発生した洪水により3万4千人以上が避難を強いられ、店舗の閉鎖や物流の混乱で約1兆ルピアの経済損失を計上しています。ジャカルタは地球上で最も速いペースで沈みつつある都市の一つで、2050年までにその3分の1が水没する可能性があると、環境専門家らが警告しています。
ジャカルタは市内に届く水道システムがないため、地元の産業や何百万人もの住民は地下水をくみ上げています。この大規模な地下水のくみ上げが地盤沈下を引き起こし、一部の地域では年間最大25センチの沈下が起きています。
加えて温暖化による海面上昇や大雨をもたらす気象状況は、低い土地に水が押し寄せ洪水に見舞われる状況が続いています。
ジャカルタにおける自然災害リスクは、2019年にジョコ・ウィ大統領が首都をカリマンタン島へ移動することを決めた主要な要因にもなっています。
インドネシアにおける気候の変化に伴い災害が頻発するなか、著しい経済成長に伴い防災対策等守るべきものや配分できるリソースも急速に変化していますので、今後本格的な事前防災対策等のスピードとダイナミズムが求められると考えます。
インドネシアにおいては“gotong royong”(ゴトン・ロヨン)と呼ばれる地域コミュニティの相互扶助の慣習が根強く残っていて、防災対策においてもその役割は大きいと考えられています。
日本は、防災対策に関してインドネシアと類似点が多々あるほか、近年の災害や新たな被害想定で明らかとなった課題を克服すべく、現在進行形で地道な努力と様々な工夫を積み重ねています。そうした取り組みも共有するなど、日本だからこそできる協力も多いのではないかと考えます。