美しい自然と独特の宗教文化で知られる神々の島、バリ。ここでは毎年、世界でも珍しい祭日が訪れます。その名も「ニュピ」。この特別な日には、外出禁止、電気の使用禁止、火の使用禁止という規則が島全体に施され、すべてが静寂に包まれます。まさに、何もかもが静寂に包まれる世界に類を見ない一日です。
2024年3月11日、私はこのユニークな体験をバリ島で味わう機会に恵まれました。ニュピはバリ・ヒンドゥー教の新年にあたり、新月の日に祝われます。この24時間、朝6時から翌朝6時まで、島は「火や電気を使わない」「外出をしない」「仕事をしない」「殺生をしない」という厳しい規則によって、静寂につつまれます。空港が閉鎖され、誰もが家の外に出ることが禁止され、明かりをつけること、料理をすることもできません。そのため地元の人々は前日に料理を準備し、静かに家族とともにこの日を過ごします。車やバイクが一台も通らず、インターネットも使えないこの日、人々は自然とともに、静かな時を過ごすのです。
私が体験したニュピの日は、普段の喧騒が一時的に停止し、車やバイクの騒音が消え去った空間は別世界のように静かでした。清々しい空気、草木の揺れる音、鳥や犬の声のみが響き渡り、島全体が穏やかな雰囲気に包まれていました。普段にぎやかな海岸も無人島に来たかのような静寂に包まれています。
ニュピの日は、バリ島だけでなく、私たち訪問者にとっても、日々の忙しさから一時的に解放され、自然や宇宙のエネルギーに触れる特別な時間です。「何もない」という贅沢を通じて、地球に住まわせてもらっていることの意義を再確認し、自然や宇宙といった、人間を超える大きな存在への敬意を新たにします。
この経験は、私に「人間中心」の生活から一歩踏み出し、自然と調和した生き方を模索するきっかけを与えてくれました。電気やガスなどのエネルギー資源に頼るのではなく、太陽や星、月、海のリズムを大切にする生活の重要性を、ニュピは教えてくれます。
バリ島でニュピを体験することは、ただの休息日ではなく、自己省察と地球との深いつながりを感じるための貴重な機会です。バリ島を訪れる機会があれば、ぜひこの「静寂の日」を体験してみてください。自然の中で心を静め、新たな気づきを得ることで、日常生活に戻ったときには、より意識的で持続可能な選択をするきっかけになるでしょう。ニュピの日は、私たちに地球との共生の大切さを思い出させ、真の贅沢とは何かを教えてくれるのです。