インドネシアお札や、企業の応接室等に飾られているマーク。気になっている人もいると思います。
これは、インドネシアの国章で、実は色々な意味が込められているのです。
本日は、インドネシアの国章の秘密とパンチャシラについて、お話したいと思います。
インド神話にでてくる神鳥で、ガルーダと呼ばれます。ガルーダ・インドネシア航空の名前としても有名です。
ガルーダは、インドネシアの伝説や神話の中にも何度もでてきます。
知識、力、勇気、忠誠、規律などの美徳を象徴しています。
ガルーダが右を向いているのは、右が、縁起が良いとされているからです。
左右の羽は17枚、尾には8本の羽毛、尾の付け根は19枚の羽、首には45枚の羽の数字を並べると、17/8/1945となり、インドネシアが独立を宣言した1945年8月17日を意味しています。
国章のガルーダが掴む巻物に書かれている文字「Bhinneka Tunggal lka」はインドネシア国の標語であり、「ばらばらであるが、それでもなお一つ」「多様性の中の統一」と訳されます。インドネシアには、様々な民族、様々な言語、様々な宗教がありますので、色々違っていてもひとつの国であるという思いが込められています。
ガルーダの胸に盾を抱えています。
盾はインドネシアの建国5原則である、「パンチャシラ」を表現しています。盾は、5つの部分に分かれていて、中央に黒い小さな盾と、背後の大きな盾になっています。
背後の大きな盾は、十字線で4つに分けられて、赤と白のインドネシアの国旗の色となっていて、十字線のうちの横線は、国土を横切る赤道を意味しているそうです。
パンチャシラ(Pancasila)というのは、「パンチャ」(panca)と「シラ」(sila)という、サンスクリット語起源の言葉の合わさったものです。「パンチャ」が数字の5、「シラ」が原則という意味で、直訳すると五原則ということになります。
インドネシアでは、パンチャシラが大事と良く言われ、パンチャシラがあるおかげで、国がまとまっているという話を聞きます。
盾の中には、初代大統領であるスカルノが発表した、パンチャシラの5原則を示しています。
エンブレムの中央にある小さな黒い盾の中央に、金色の星が描かれています。パンチャシラの最初の原則、「唯一神への信仰」(Ketuhanan Yang Maha Esa)を表します。黒は自然の色を表し、黄色い星は、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教、キリスト教などインドネシアの主要宗教を表すとされています。インドネシアには、国に認められた6つの宗教があり、インドネシア人はそのうち1つを信仰します。
赤い地に描かれているのは四角い輪と丸い輪で構成される円形の鎖が描かれています。
この鎖はパンチャシラ第二の原則、「公正で文化的な人道主義」(Kemanusiaan Yang Adil dan Beradab)を示します。
鎖は人間の世代間のつながりを示し、四角い輪は男性を、丸い輪は女性を意味します。
白い地に描かれているのは熱帯の樹ベンガルボダイジュが描かれています。
パンチャシラ第三の原則、「インドネシアの統一」(Persatuan Indonesia)を示します。
この樹は地上に出た気根が地面を覆い、その上に枝が地面に被さるように広がる特徴があり多くの文化的根を持った人々が一つの国にまとまるという理想を意味しています。
赤い地にジャワ島の野牛・バンテン(banteng)の頭が描かれています。
パンチャシラ第四の原則・「合議制と代議制における英知に導かれた民主主義」(Kerakyatan Yang Dipimpin oleh Hikmat Kebijaksanaan, Dalam Permusyawaratan / Perwakilan)を示します。バンテンは、社会的動物であり、決定は合議によりなされることを象徴する存在です。
バンテンは、ジョコウィ大統領の所属政党であるインドネシア闘争民主党のシンボルにも引き継がれています。
白い地に金色の稲穂と白い綿花が描かれています。
これはパンチャシラ第五の原則・「全インドネシア国民に対する社会的公正」(Keadilan Sosial bagi seluruh Rakyat Indonesia)を示します。コメと綿花は社会の持続と生計の象徴であることを意味しています。
国章にちなんだガルーダ・パンチャシラという歌があるそうなので、早速聞いてみました。
インドネシアの行進曲のようなリズムで、パンチャシラの原則を唱えるような内容で、呪文の様な存在のようです。
Garuda Pancasila ガルーダ パンチャシラ Akulah pendukungmu 私はあなたのために奉仕します Patriot proklamasi これは、国を愛する人の宣言 Sedia berkorban untukmu あなたの為に、身も心も捧げます Pancasila dasar negara パンチャシラは、国の基本原則だ Rakyat adil makmur sentosa 民衆は公平に 平和に栄え Pribadi bangsaku インドネシア民族として Ayo maju maju それ! 進め! 前進だ Ayo maju maju それ! 進め! 前進だ Ayo maju maju それ! 進め! 前進だ
多様性の中の統一を国是としているインドネシアでは、パンチャシラ自体が、むしろ様々なものを包括するもので、その曖昧さで、なんとかインドネシアの統一に結びついたといえます。
1985年のスハルト政権では、パンチャシラを存在原則として受け入れるよう法制化して、それに違反する活動を禁止する措置を行いました。
イスラム教団体がイスラム教の上にパンチャシラをおくことができないと法制化に反対し、過激なテロ行為を行うなど混乱しました。
スハルト政権崩壊後は、パンチャシラ強制が緩んだ状態が現在まで続いています。
インドネシアではイスラム教徒が多数派を占めていますので、パンチャシラへの不満も根強いとのことです。