豊かな海の幸に恵まれたマカッサルでは、日々新鮮な魚が食卓にのぼります。そんなマカッサルの“台所”と呼ばれているのが、漁港に隣接するパオテレ市場(Pasar Paotere)です。早朝から地元の漁師や仲買人、飲食店関係者が集まり、威勢よく取引が行われる様子はまさに活気に満ちた“魚の宝庫”。今回は、パオテレ市場の基本情報や早朝の賑わい、新鮮な魚介類の種類などについてご紹介します。
パオテレ市場は、マカッサル市の北側にある漁港・パオテレ港に隣接しています。港町として知られるマカッサルは、古くから海洋貿易の拠点として発展してきましたが、パオテレ港は特にローカルの漁業活動が盛んな場所。そこに隣り合うように形成されたパオテレ市場は、地元の人々にとって日々の生活に欠かせない食材供給源となっています。
マカッサルは香辛料貿易の時代から交易の要衝として栄え、スラウェシ周辺は香辛料や木材、魚介類など多岐にわたる品物の流通拠点でもありました。特に海洋交易が活発だったことで、さまざまな文化や技術が集まり、漁業においても大きな発展を遂げてきました。
漁師たちは小型の船や伝統的な木造船ピニシ(Phinisi)を使い、近海から遠洋までさまざまな漁を行っています。パオテレ市場は、そうして獲れた魚介類を最初に集約し、地元の人々や商人たちが直接“新鮮な状態をすぐに買える”場として機能。近隣のレストランや市内の市場へ流通する魚の多くがここを経由するため、マカッサルの食文化を下支えする重要なインフラともいえるでしょう。
また、歴史的にはオランダ東インド会社(VOC)がこの地域に進出していた時期もあり、港周辺の物流や交易ルートが整備された経緯があります。こうした歴史的背景が重なり合ったことで、パオテレ港周辺には自然発生的に大規模な魚市場が形成され、現在に至るまで“マカッサルの台所”として進化し続けているのです。
パオテレ市場は屋根付きのエリアだけでなく、屋外にも露店が連なり、早朝から多くの人で混み合います。魚の匂いと人々の掛け声が相まって、五感で市場の熱気を体感できます。
パオテレ市場が最も賑わうのは、夜明け前から午前中にかけて。暗いうちから漁を終えた船が続々と帰港し、仲買人や市場スタッフが魚を下ろしはじめます。新鮮な魚を手に入れようと、市内のレストランの買い付け担当や屋台のオーナー、地元の主婦が一斉に押し寄せる時間帯です。特に午前中は魚の選別や値段交渉が活発で、一日のエネルギーが最も高まる瞬間といえるでしょう。市場内を歩けば、どこを向いても活気が溢れる光景に目を奪われます。仲買人が声を張り上げて値段を叫び取引や値段交渉は非常にテンポが速いのが特徴。もし購入を考えているなら、事前に相場感を把握しておくとスムーズです。
パオテレ市場には、マグロ、カツオ、サバ、ハタ、フエダイ、スナッパーなど、日本でもおなじみの魚から、名前を聞いたことのないような珍しい種類まで多種多様な魚が並びます。
さらに、エビ、イカ、カニなどの甲殻類や軟体類も豊富です。日本ではあまり流通しない希少な魚や、マカッサル近海でしか獲れない海産物にも出会えるのがパオテレ市場の魅力。形や色が独特な魚も色々見つけることが可能です。
パオテレ市場は、マカッサルの海の恵みが一堂に集まる“生きた台所”です。漁港から直接運ばれる魚の鮮度は抜群で、食材選びから値段交渉までさまざまな楽しみ方が詰まっています。活気に満ちた市場の雰囲気と、地元ならではの人々の笑顔が楽しい場所でした。