【インドネシアのミニバス】シェアリングエコノミー時代にピッタリの交通システム
インドネシアには約9人乗りの「アンコット」または「ミクロ」とも呼ばれるミニバスがあります。場所によってアンコットの呼び方も違います。
南スラウェシのマカッサルでは、「ペテペテ」というなんとも愛嬌のある名前で呼ばれています。
スマトラのメダンでは「スダコ」、バンダアチェでは「ラビラビ」など、なんとなく親しみやすい言葉で呼ばれることが多いです。
それだけ「アンコット」は地元の人たちに愛されている証拠でもあります。
ペテペテの乗り方
マカッサルのペテペテは濃い水色や赤色の車体が町中で移動しています。
子どもたちから年配の人に至るまで多くの人が利用しています。扉が開けっぱなしでいっさい閉じないのが、いかにもアジアのバスという感じです。たまに定員以上の大勢の子どもたちが扉のそばにつかまって乗り込んでいるなど、テレビで見るような映像が飛び込んできてとても楽しいです。
ペテペテにバス停はないため、乗る時は大通りに出てペテペテを待つだけで良いのでとても簡単です。大通りにはかなりたくさんのペテペテが走っているため、長い時間待つ必要もありません。
ペテペテによって終点や通る道が違うので、車体に書いてある終点場所を見て確かめて乗る必要があります。観光で初めて訪れている人にとってはなかなか難しいですが、お客の要望の場所まで遠回りしてくれる運転手がたくさんいます。
どのペテペテに乗ればいいかわからない場合は、行きたい場所の名前を運転手に聞いてみれば大丈夫です。
運転手は自分の通る道じゃないとしても、どのペテペテに乗ればいいか教えてくれます。行きたい先のペテペテが通るまで待ち、運転手を止めて私たちが乗れるように案内してくれる人もいます。
マカッサルの人たちはとても親切で、外国人にもとっても親切なので挑戦してみると楽しいと思います。
行き先についたら「キリ!(インドネシア語で左)」と言えばペテペテを止めて降ろしてくれます。
ペテペテの料金は、1回乗車で、Rp5000~6000(約40~50円)ととても安いです。
インドネシア人はあまり歩かない
赤道に近いマカッサル。
少し歩いてみるとわかりますが、大きな通りにはほとんど人は歩いていません。
歩いているのは私と若干の若者くらいです。外国の街をランニングするのが大好きな私は、休日はよく散歩にでかけます。
10分も歩かないのに、陽差しの強さに圧倒され汗だくの状態になります。すぐに冷房の効いたモールの中に避難しました。さすが赤道直下。常に気温34℃以上で、暑いのが好きな私でも、昼の強い日差しは結構耐えられないものがあります。
インドネシア人の移動がほとんど車やバイクという理由もあります。
地域の人々は外で歩いて移動するという習慣があまりないのでしょう。
私はマカッサルの街中を歩くのが好きなので、ペテペテが隣に走ってきて、よく「どこまで行くの?乗ってかない?」と運転手に声をかけられます。
実は、乗り物好きな私でも、あまりペテペテは利用しません。
どこに連れていかれるかわからない不安は、マカッサルのほとんどの道を知ってしまった私にとって、まったく問題ないのですが、あの車内の独特の狭さとシートなのか、板なのかわからないところに縮まって座らなければならない状態。ドア開けっ放しで走り、整備不良でいつ壊れてもおかしくない状態で、スピーカー爆音で音楽をかけて走る姿は、最初は面白がっていましたが、最近はタクシー利用になってしまいます。
ペテペテにのると、必ず話好きのおばちゃんやおじさんに出くわします。
めずらしい日本人だなんてばれた日には、おばちゃんたちからの熱烈な質問攻めにあい、ずっと途切れることのない会話に巻き込まれます。
そんな瞬間こそ、異国の地でないと味わえない経験なのかしれません。
国際協力隊のメンバーと話をしていて、マカッサルの隣のタカラール県まで、ペテペテで1時間半乗った話を聞いて驚きました。あの狭い車内で、クーラーもない状態の中ペテペテで移動する忍耐力はさすがと脱帽しました。
インドネシアは歩行者にやさしくない
インドネシア全般に言えますが、歩道に人が歩くような仕様になっていません。
その狭い歩道にところどころ大きな木が生えていたり、大きな鉢植えが置いてあったり、突然大きな穴が空いていて、歩きスマホなどしながら歩いていたら、木にぶつかり、穴に突入など、危険きわまりない状態です。
その歩道での危険回避の度に、車道に出る必要があります。
車道は大量の車とバイクの群れがひっきりなしにやってきて、ひかれそうになることはしょっちゅうです。
また、車やバイクから発生する大量の排気ガスは、健康のための歩きが、余計体に悪そうです。
一番危ないのは交通事故です。交差点は日本のように歩行者車優先ではなく、常時左折可なので青で横断していても、どんどん車左折してきます。
歩行者の前で車が待つということはしないので、道路を渡る時は勇気を振るい起こして、迫り来る車を手で「制しながら」渡ります。ひとり渡りするにはだいぶかかりました。
ほとんどの場合は横断しそうな人をみつけて同時に渡ると大丈夫です。
つまり、マカッサルでもインドネシアのどこ行っても思うのは、インドネシアは「歩くところではない」という事です。
インドネシアで交通事故にあってしまっては、大変なので、食事や近くのモールまで買い物にという場合でも、タクシーやペテペテを使うのは有りです。
基本は、歩きはやめた方が安全のために良いと思います。
歩行者にとってやさしくない環境が、ペテペテの活躍に一役かっているといえるでしょう。
ペテペテ交通システムの利点
ペテペテのシステムは、行き先はある程度決まっているけれども、どこでも乗り降りできて、基本は1回いくらの均一料金です。タクシーの利便性とバスの相乗り且つ経済性など両方の利点をうまく組み合わせており、特に日本の地方で活用できそうだと思います。
すでに地方では高齢化が進んでいる一方で、公共機関の中心であるバスの本数が年々減少しており、車で運転しないと買い物や病院に行けない状態です。
お年寄りの自動車運転の事故も多くなり、安全で安価な公共交通機関は地方には必要です。
私の住んでいる市も30年前は、1時間に3~4本のバスが通っていましたが、現在は朝と夜の通勤通学時間だけの運行となり、昼間は1本も走らない状態です。
市の人口は、30年前と比べて増加しているにもかかわらずです。その分、1家庭で1人ずつ車を保有する事は当たり前となり、3~4台の自家用車が家の駐車場にある状態です。
我が町中にペテペテが走っていれば便利だろうなと思うのです。
ライドシェアリングにペテペテは最適
近年シェアリングエコノミーという事が言われており、欲しいものを購入するのではなく、必要なときに借りればよい、他人と共有すればよいという考えを持つ人やニーズが増えています。そのような人々と、所有物を提供したい人々を引き合わせるインターネット上のサービスが注目を集めている中で、「ライドシェアリング」と呼ばれる、「Uber(ウーバー)」や「GRAB(グラブ)」等の自家用車を利用した配車サービスも、米国やアジアを中心に利用者を増やしています。
日本では、タクシー業界の反発や法規制などでなかなか進まない「ライドシェアリング」ですが、ペテペテのようなミニバスを活用できるような世界も良い気がします。どこでも、いつでも行ける利便性と、乗り合いにすることによる経済性など、ペテペテのシステムそのものです。
現在の法律を改正する検討が行われているため、今後のライドシェアリングの市場拡大も期待されている中で、日本版ペテペテ導入はどうでしょうか。誰か導入検討しませんか?
日本はインドネシアに多くの援助をしていますが、日本がインドネシアから学ぶ事があっても良いのではないでしょうか。