ラマダンが動かす大特需―インドネシア経済にもたらす影響とは?

Business Indonesia

イスラム教徒が日の出から日没まで飲食を控える断食月であるラマダンも後半戦に入りましたが、この期間はインドネシア経済にも大きな影響を与える特別なイベントでもあります。今回はラマダンがもたらす経済効果をお伝えします。

消費の大幅増加!ラマダン前後の買い物事情

ラマダン期間中とラマダン明けの祝祭(レバラン)直前は、食品、衣料品、贈り物などの消費が急増します。

食品・飲料については、ラマダン中、日没後の食事(イフタール)のために食品や飲料(特にシロップ類)の購入が活発化します。ナツメヤシや揚げ物、お菓子など、ラマダン特有の商品が飛ぶように売れます。

衣料品・ファッションについては、ラマダン明けに新しい服を着る習慣が根付いているため、アパレルショップや靴屋が大繁盛。新調することが常識化しているため、店舗には人が溢れかえります。

電化製品・家具については、後述するTHRボーナスの影響で、スマートフォン、家電、家具などの新規購入や買い替えが進みます。驚くほど売れていきます。

THR(宗教的大祭手当)による消費拡大

消費を支えるのが、THRと呼ばれる特別なボーナスです。

インドネシアでは企業が従業員に対し「THR(Tunjangan Hari Raya)」という特別なボーナスを給与1ヶ月分相当で支給する義務があります。これがラマダン期間中の消費意欲を一気に引き上げます。一部の人はこのボーナスを貯蓄や投資に回すため、金融市場にも影響を与えます。

日本のボーナスは企業の業績次第で支給の有無や金額が決まりますが、THRは13ヶ月目の給料として、業績に関係なく必ず支払わなくてはなりません。企業側には大きな負担となりますが、インドネシアで事業を展開する上で避けて通れない制度です。そして労働者はこのTHRをあてにしていますので、支給が遅れると大問題になります。

交通の活性化

ラマダンが終わると「レバラン」(断食明け祭)が始まり、多くの人々が故郷へ帰省します。この帰省ラッシュを「ムディック(Mudik)」と呼びますが、日本の帰省ラッシュとは規模が全く違います。今年は全人口の約52%にあたる1億4,648万人が移動すると予測されており、ジャワ横断高速道路では混雑が予想され、自家用車795万台が通行する見込みです。

この期間、高速道路はジャカルタから地方へ向かう路線が全線下り線に変更されるほどの対策が取られます。飛行機や鉄道も満席になり、交通需要が劇的に増えます。交通量の増加に伴いガソリン消費も急増し、高速道路料金収入も大幅に伸びます。

地域経済を支える「パサール・ラマダン」

ラマダン期間には「パサール・ラマダン」と呼ばれる特別市場が街のあちこちに出現します。夕方になると多くの屋台が開店し、断食明けを待つ人々が大勢訪れます。パサール・ラマダンでは、各地域の伝統料理や地元特産品が販売され、観光客や地元住民に人気です。また、地域の生産者や小規模事業者にとっては収益を大きく伸ばせる貴重な機会となっています。

ラマダン中の飲食店の挑戦と工夫

飲食店はラマダン期間中、日没後の営業に力を入れ、「特別イフタールセット」や「ラマダン限定メニュー」を提供します。またオンラインデリバリーサービスを積極的に活用して売上を維持・拡大しています。深夜まで営業を延長し、多くの店舗が売上増を記録しています。

オンライン経済にも波及するラマダン効果

オンライン市場もラマダン期間に特需を迎えます。ECプラットフォームではラマダン限定セールや割引プロモーションを開催し、売上が大幅に伸びます。特に食品、ファッション、電子機器などのカテゴリが好調です。またSNSインフルエンサーを起用したマーケティングも活発で、若年層を中心に購買意欲を喚起しています。さらに配送業界も繁忙期を迎え、物流会社は配送能力を強化してこの期間の需要拡大に対応しています。

おわりに

ラマダンは単なる宗教行事を超え、インドネシア経済全体に大きな影響を与える重要な時期です。消費活動の増加、交通や観光業の活性化、地域経済の促進など、多方面にわたって経済波及効果を生んでいます。今後もその影響はさらに広がり、インドネシア経済を動かし続けるでしょう。

 

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