11月15日に日本や中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など「地域的な包括的経済連携(RCEP)」の参加15カ国が協定に署名したというニュースが飛び込んできました。
関税削減や統一的ルールにより自由貿易を推進する枠組みで、日本にとっては貿易額が最大の中国、3位の韓国が含まれる初の経済連携協定(EPA)であることが注目されています。参加国全体での関税撤廃率は品目ベースで91%になり、国内総生産(GDP)の合計が世界の約3割を占める巨大経済圏が誕生することになりそうです。
中国主導で、ASEAN10ヵ国(インドネシア、フィリピン、ブルネイ、タイ、マレーシア、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、シンガポール)に日本と韓国に、オーストラリアとニュージーランドを加えた15ヵ国で、自由貿易を推進するために、関税を少なくしましょうということです。
インドも参加する予定でしたが、中国との政治経済での警戒心でひとまず参加を見合わせました。
日本としては、食品の重要5品目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)の関税は守られた形ですが、中国の存在感が大きくなった形となりました。
日本としては、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)合意後、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も成し遂げ、世界的に保護主義の傾向が強まる中、オープンな自由貿易体制づくりで世界をリードしてきましたが、ASEANを取り込む中国主導のRCEPに参加しないと、今後ASEANへの影響力が低下する恐れがありました。
日本としてはASEANが最近中国経済を頼りにしてきているため、警戒感がありましたが、RCEPから離脱してしまうと、中国に完全に主導権を奪われてしまいます。
インドを入れた16カ国での枠組みにできれば、インド経済と日本経済とで、中国を牽制しながら、ASEAN諸国への評価をさらに高めるチャンスでしたが、今回インドが離脱しており、日本だけでは片手落ちとなり、中国主導で自由貿易が進む事が心配されます。
TPPでは、関税率は段階的にゼロにすることが盛り込まれていますが、RCEPでは関税撤廃率は約半分とであるため、貿易の自由度からするとTPPの方が優れています。
TPPでは、オーストラリアやカナダなどが入り、今回バイデン大統領になれば米国も再度参加を表明する可能性がありますが、ASEAN諸国は入っていません。
一方RCEPは、中国主導でASEAN諸国が参加となっているため、日本としてもASEANの主導権を中国に奪われる可能性があるので、参加を表明せざるをえなかった背景があります。
人権や司法取引、知的財産権などの貿易の透明性はTPPがRCEPよりかなり優れているので、RCEPはTPPの劣化版であると言われています。
日本はASEAN各国と個別にRCEPより有利な関税率である経済連携協定(EPA)を結んでいるため、RCEPでの影響は少ないと見られています。中国から松茸や、韓国からマッコリ酒が日本に安く入るようになるそうです。
今後の焦点はRCEPの枠組みの中で、中国を牽制しつつ、国をまたいだ広域的なサプライチェーンの実現や、通関コストの大幅な低減などで真の自由経済のネットワークを構築していけるかどうかに注目されます。
また、中国主導でRCEPを行なった事で中国とASEAN、日本やオセアニアがどのような影響がでるのか注目されます。
ASEAN諸国は、RCEPが初の経済連携となり、自由貿易のうま味を感じると、より自由度の高いTPPへの加盟に動いていく可能性もあります。
ASEAN諸国をより透明性のある自由貿易であるTPPへの加入に導いていき、日本を含めた東アジア+北米+オセアニアの経済連合に近づける事が日本にとっての課題となりそうです。
今後の菅政権のかじ取りに注目していきたいと思います。