マカッサルのスーパーマーケットはどこも似通った品揃えの背景を探る

Indonesia Makassar

マカッサルのパナックカンモールに、かつてハイパーマートが入っていた場所に新しく「ダイヤモンドスーパーマーケット」がオープンしました。パナックカンモールはマカッサル市内でも特に人通りが多く、大型ショッピングセンターが集まるエリアとして知られています。新しい店舗が開店すると聞くと「どんな品揃えなんだろう?」と期待してしまいますが、オープン初日に訪れてみたところ、正直言うと品揃えの印象は他のスーパーマーケットと大きく変わらないように感じました。

「インドネシアのスーパーマーケットはどこへ行っても似たような商品ばかり」という声をよく耳にしますが、それにはどのような要因があるのでしょうか。今回はダイヤモンドスーパーマーケットを例に挙げつつ、インドネシア全体の流通構造や消費者行動など、背景にあるいくつかのポイントを掘り下げてみたいと思います。

消費者需要の集中

インドネシア国内では、大手ブランドの即席麺やスナック菓子、日用品などの「定番商品」に人気が集中する傾向があります。例えば、インドネシアを代表するインスタント麺ブランドの「Indomie」や大手スナックメーカーの「Mayora」、日用品だと「Wings」や「Unilever」などが挙げられるでしょう。これらのブランドは全国規模で展開されており、ほとんどの消費者が「これなら間違いない」という安心感を抱いているのが特徴です。

スーパーマーケット側としても、売れ筋がはっきりしている定番商品を中心にラインナップすれば、在庫管理のリスクを抑えられ、安定した売上を確保できます。その結果、どの店舗を訪れても同じような商品が棚を占めることになりがちです。マカッサルにある他の大手スーパーやミニマーケットと比べても、新しくオープンしたダイヤモンドスーパーマーケットが「大きな差別化をしようとしない」のは、こうした需要の集中を踏まえた無難な戦略ともいえます。

一方、地元産のスナックや地方特有の調味料、伝統菓子といった商品を扱う店舗が、まだまだ少ないのも事実です。特にマカッサルは魚介類や地元グルメで有名な街ですが、それらの関連商品がスーパーマーケットの棚に幅広く並んでいるかと言われると、あまり見かけないのが現状です。こうした地元の特色ある商品を積極的に仕入れようという動きが弱いのも、各スーパーが「定番商品中心」のマス向け展開に注力している理由の一つかもしれません。

大手サプライヤー・ディストリビューターの影響力

インドネシアには全国的な流通網を持つ大手の卸・流通業者が多数存在しています。こうしたディストリビューターは大手メーカーの商品をまとめて取り扱い、全国のスーパーや小売店に素早く大量供給する役割を担っています。

スーパーマーケットにとっては、これら大手サプライヤーを通じて仕入れを行うほうが、値段交渉や物流コストの面で優位になります。たとえば地方独自の商品や輸入品を扱おうとすると、個別に仕入れルートを確保しなければならず、物流費が増えたり、取引条件が厳しくなったりします。結果として、「どの店舗も同じサプライヤーを使い、同じ商品を大量に仕入れる」という構図が生まれやすくなるのです。マカッサルのような地方都市でも、ジャカルタなどの本土エリアやスラバヤなどから大手ディストリビューターを経由して商品が運ばれてくるケースが大半を占めており、地方色豊かな商品よりも、大手メーカーの汎用商品が主流となりやすいのが現状です。

また、大手メーカーは販売促進費用をスーパーマーケットに提供しており、新規オープン時のセールや販促キャンペーンもその支援金のもとで行われることが少なくありません。オープン直後の集客を狙う場合、こうした大手メーカーの支援は非常に効果的であるため、自然とそれらのメーカー商品を優先的に棚に並べる流れとなっていきます。

消費者の価格志向

インドネシアの多くの消費者は、まだまだ価格重視の傾向が強いといわれています。日々の食料品や日用品の購入においては、「少しでも安いものを」という思考が根付いており、中間層や庶民層を中心に特売情報を追いかけるのが当たり前です。そのため、スーパーマーケットも高付加価値の商品を押し出すより、定番品や自社のプライベートブランドを大量に扱って薄利多売を狙う戦略をとりやすくなります。

こうした価格志向は都市部でも顕著ですが、特に地方都市では可処分所得の面でジャカルタなどの大都市と比べて差がある場合も多いです。マカッサルも南スラウェシ州の中心都市ではありますが、ジャカルタと比べると平均所得は低い傾向にあります。そのため、「とにかく安い商品が欲しい」という層が厚いのも事実です。ダイヤモンドスーパーマーケットとしては、そうした消費者ニーズを意識して、結果的に他店と同じ商品構成に落ち着いてしまうと考えられます。

ローカルスーパーと大手チェーン店との差異の薄さ

インドネシアで展開している大手スーパー(Hypermart、Carrefour〔トランスマート〕、HERO、Lotte Mart など)や、ミニマーケットチェーン(Indomaret、Alfamart など)は、チェーンストアとして品揃えや陳列、価格設定が本部主導で標準化されています。これらの大手チェーンは全国展開しているため、どの地域でもある程度統一されたバラエティや価格帯の商品を揃えるのが基本方針です。

一方、ローカルの独立系スーパーでも、前述した大手サプライヤーからの仕入れが中心となっているため、結局は同じ商品ラインナップに落ち着きがちです。たとえ店舗独自の工夫を凝らそうとしても、サプライヤーやディストリビューターとの関係や取引条件などの制約から、大きく商品構成を変えるのは容易ではありません。マカッサルのように大手チェーンが進出している地方都市では、ローカルスーパーが本当に独自色を打ち出すには、思い切った戦略が求められると言えるでしょう。

棚割りや販売促進の画一化

スーパーマーケットの棚のレイアウト(棚割り)や販促キャンペーンは、多くの場合、メーカー支援金や売上実績を元に決定されます。特に大手メーカーは販促費用を拠出して、自社商品を目立つ場所に陳列するように指定したり、レイアウト提案をパッケージとして行ったりします。こうした仕組みは、全国どの店舗でも同じディスプレイや棚割りになる原因の一つです。

新規オープンしたダイヤモンドスーパーマーケットでも、開店早々に目立つ場所に陳列されていたのは、大手メーカーの即席麺や調味料、清涼飲料水などでした。オープニングセールのチラシも、これらの主要商品の割引情報が中心で、他店と大きく差があるわけではありません。もちろん、顧客としてもこうした定番商品の割引は魅力的ですが、反面「他と同じような商品ばかり」という印象を強くしてしまいがちなのです。

差別化を図る取り組みも存在

近年、インドネシアでも富裕層や中間層の拡大、消費者の嗜好多様化が進み、都市部を中心にオーガニック食材や輸入高級食品、地元産の特色ある商品に特化したスーパーが増えてきています。ジャカルタやバリ島をはじめとする観光地や大都市部では、欧米スタイルのグルメ系スーパーマーケットや高級志向の小売店の台頭も見られ、少しずつ差別化が図られています。

マカッサルでも、一部の高級デパート内のフードコーナーや専門店では、輸入商品やプレミアム商品を扱うケースが増え始めています。しかし、国土が広大で物流インフラに格差のあるインドネシアにおいては、大手サプライヤー中心の流通構造が依然として強く、地方まで含めると「どの店に行っても同じような品揃え」という印象が根強く残っています。地方で個性的な商品を展開しようとするには、経済面やロジスティクス面で多くの課題があるのです。

とはいえ、マカッサルは南スラウェシ州の玄関口として経済発展も進んでおり、今後は富裕層や観光客向けの商品需要が高まる可能性があります。地域の伝統的な食文化や特産品をうまく取り込むことができれば、マカッサル発の新たな小売モデルが誕生する可能性もあるでしょう。

まとめ

新しくオープンしたダイヤモンドスーパーマーケットを訪れてみても、他の店舗との品揃えの違いを感じにくいのは、インドネシアの流通構造や消費者の嗜好、そして大手メーカーの影響力など、さまざまな要因が絡んでいるからです。

マカッサルだけでなく、インドネシア全土のスーパーの多くは定番商品や大手メーカー中心のラインナップを揃え、価格訴求や効率的な在庫管理を優先する傾向があります。しかし、都市部では差別化を図る動きが少しずつ出始めており、オーガニック商品や地方特産品、高級輸入品などを扱う店舗が増加しているのも事実です。今後マカッサルでも個性ある商品を扱うスーパーや新しい販売戦略が増えていく可能性は十分にあります。今後の変化に期待したいところです。

 

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