海外進出する時に、人材が重要になってきます。その人材をどう育てるかのきっかけとなる事業に外国人技能実習制度があります。
技能実習生の側も待遇面などから母国に戻ったら日系企業で働きたいと思っている人が多いといいます。技能実習生にとって職種が同じなので勉強したことが無駄にならないからです。
不当労働などの問題もあるなか、海外ビジネス進出で役立つ人材育成に注目します。
「技能実習」や「研修」の在留資格で日本に在留する外国人が報酬を伴う技能実習、或いは研修を行う制度です。
日本の技能実習生は、389,321人
国別ではベトナムが一番多く(196,732人)、中国(89,918人)、フィリピン(35,515人)、インドネシア(31,900人)と続きます。
平成30年度 外国人技能実習機構
外国人実習生の受け入れは、もともとは海外現地法人での研修制度が始まりです。
日本の技術を開発途上国に伝えることで国際貢献をすることが目的でしたが、この制度は企業にとってもメリットがあり、1993年に正式に制度化されました。
しかし、技能実習生の受け入れを通して、国際貢献だけではなく企業を活性化しようとする素晴らしい経営者がいる一方で、不当労働などの問題も存在します。
一方、イオン傘下で四国の食品スーパーマルナカは、インドネシア人技能実習生が実習終了後母国のインドネシアイオンに優先的に採用してもらえる仕組みを作りました。アジアに進出している流通業でこういった取り組みは珍しいです。技能実習生の就労先としてのイメージ向上に期待できるそうです。
マルナカと惣菜製造グループ会社の2社で、インドネシア技能実習生を60名程採用して働いている。3年間の技能実習が終了すると、帰国後イオンの現地法人への就職を希望している。勤務場所や本人の都合が合えば、優先的に採用されるとのことです。記事:日経新聞2020/7/29付
日本のスーパー向け惣菜の製造現場では衛生基準が厳しいので、日本の現場で衛生基準を身に着けた実習生は貴重な存在であります。日本語レベルも上昇し、日本の習慣への理解も深まるため、インドネシアの現地で即戦力として活躍できます。現地採用で社員教育しても、なかなか衛生管理を現地内で教育することは難しいのです。
実習生側もインドネシアに戻ったら、日系企業で働きたい希望もあり、職種が同じであれば日本での勉強が無駄になりません。
私が勤める水産会社は、10年前からインドネシア技能実習生を受け入れしています。毎年10名程3年間(現在は2年延長も可能)実習して母国に送り出しをしています。2020年現在40名在籍しています。
以前は、中国、タイ、ベトナムから受け入れをしていましたが、現在はインドネシア人のみとなりました。2011年の東日本大震災の時に、中国人とインドネシア人技能実習生が在籍していましたが、震災直後に中国人実習生が帰国、インドネシア実習生は帰国せずに復興に尽力してくれました。その思いが続いており、インドネシアとのつながりが強化されました。
工場には、お祈りができる畳の部屋を設置して、メッカの方角を示します。お祈りの前に手足を洗える様に手洗い場所を完備して対応しています。
ハラル対応の食事は難しいので、せめてお弁当は豚なしでお弁当業者にお願いしています。
インドネシア技能実習生の故郷は、主に中部ジャワとバリ島になります。実は母国に帰国しても働く場所が少なく、日系企業等もなく男性は自分で起業したりしますが、女性は結婚して子育てする生活が多くなっています。
せっかく日本で高度な衛生管理や日本語、日本の習慣を身につけても、活かせる会社がほとんどありません。支払われる給料もインセンティブがある企業は少なく、その地区の平均賃金しか支払われません。
せっかくの技術を無駄にしないように、インドネシアで会社を設立して、日本を卒業した技能実習生の受け皿になる形ができないかを模索していました。
インドネシアで事業をする場合、ローカルにしかわからないルールやしきたり、商習慣など苦労する事がたくさんあります。そんなとき、政府や相手企業の交渉などは、言葉だけの問題ではありません。インドネシア人同士のコミュニケーションで、うまくいかなかった事が、簡単に解決できる事も多いです。
研修生にとっても、日系企業で働ける事は自分のスキルを活かせるためモチベーションアップにもつながり、戦力となってもらえる可能性が高いです。
ビジネスの成功は、人ありと言いますが、現地を精通している技能実習生をそのまま採用するのは強みと言えるでしょう。
海外進出ビジネス成功のひとつとして技能実習生を採用する方法も検討してはいかがでしょうか。