インドネシア人が普段飲んでいる飲み物は、Kopi(コピー=コーヒー)かAqua(アクア=水)かTeh(テ=お茶)です。インドネシアでお茶の事をTeh(テ)と言います。
普段皆さんが良く知る紅茶の代表である、リプトン・イエローラベル紅茶に、実は、インドネシア産の茶葉が入っています。
今回は、インドネシアの紅茶についてお話をしたいと思います。
インドネシアのお茶の生産量は約14万トン(2017年FAO)と世界7位の生産量です。
紅茶のランキングではインド、スリランカ、ケニアに続く紅茶生産国として知られています。オランダ統治時代は、セイロンなどに並ぶ紅茶の一大生産地でした。
インドネシアで作られる紅茶のうち、良質なものは国外へ輸出します。標高の低い茶園で栽培されているため、クセがなく飲みやすいため多くはブレンド用茶葉として使われています
インドネシアでは、西ジャワを中心に紅茶の生産が行われています。
ジャカルタからボゴール経由で渋滞がなければ2時間程度で到着できるプンチャックはそのひとつで、標高800~1200mの地域は雨や霧が多くお茶の栽培に適しています。
この地域は紅茶の生産地だけでなく、避暑地としても有名な場所で標高が高いため気温は低く平均気温は20℃前後の場合が多いです。
茶畑はアッサム系の大葉種で、茶葉は人の手の大きさになります。この地域では、年間を通じて茶摘みを行うことができます。
インドネシア人が普段飲んでいるお茶は、ジャスミンの花やジャスミンの香りを付けたすっきりとした味の紅茶になります。日本人からするとかなり強烈な香りのものが多く好まれています。
インドネシアのレストランでお茶を頼むと、砂糖入りのとても甘いジャスミンティーが出てきます。特にジャワ人は甘いお茶が好きな人が多く、甘いお菓子と一緒に甘いお茶がでてきます。
多くの日本人は甘いお茶に抵抗があるので、砂糖抜きにしてもらいたい場合は、テ・タワール(Teh Tawar)で甘くないお茶がでてきます。お店によっては、できないと言われる場合もあります。
インドネシア人は、熱すぎるお茶は苦手なので、ぬるいくらいのお茶がでてきます。
インドネシアではイスラム教徒が多いため、お酒を飲む代わりに紅茶やコーヒーを飲みながらおしゃべりをします。インドネシアの一部地域では、伝統的な方法でお茶を楽しんでいます。
ジャワ島のチレボン、テガル、ぺマラン、ブレブスとその周辺地域では素焼きの茶色いポットと小さな湯呑で飲む「ポチ茶」の文化が根付いています。ポチ茶にはジャスミン茶が使われており、甘味料は氷砂糖が使用されます。
お茶を飲む時に、コップを振るだけにして、氷砂糖をかき混ぜてはいけません。
そのため始めは苦く、氷砂糖が時間をかけて溶けた後は甘味を感じるようになります。実はそこには「人生は苦いものだが、辛抱強く我慢すれば人生の甘さを得ることができる。」という深い意味を味わいながら甘さを感じて欲しいそうです。
「ニャネウット」とは何百年も前から西ジャワに伝わるイスラム教徒の伝統行事で、新年を迎えるときに紅茶を飲むものです。黒砂糖を入れて紅茶を甘くします。
ニャネウットには飲み方の作法があり、最初に手のひらの上でガラスを2回まわし、香りを3回に分けて吸ってから飲みます。日本の茶道に近い飲み方ですね。
「パテハン」はジョクジャカルタの伝統的な茶道で、伝統舞踊や音楽を楽しみながらお茶を楽しむものです。もともと王宮で広まったものです。給仕が立ち上がらず、低い姿勢のままお茶を出します。
マレー系やインド系のレストランで提供される「テータリック」は練乳入のミルクティーです。2つのカップを両手に持ち練乳と紅茶をカップに移し替えながら混ぜ合わせます。高い位置から注ぐことによって空気を入れ泡立たせるのが特徴です。その様子がタリック(=引っ張るの意味)に見えるのでテータリックと呼びます。
インドネシアのお茶文化は広く根付いていますが、世界的ブランドに成長した紅茶は残念ながら無い状態です。輸出される茶葉も多くはブレンド用で、他国産の茶葉と混ぜて売られているのでインドネシア産ブランドがついていないのです。
リプトンの茶葉の原産国もケニア・インドネシアとなっているのでいつのまにか、口にしていると思います。リプトンの謳い文句は「太陽の恵みをたっぷり浴びたケニア産茶葉中心のブレンド」とインドネシア産を混ぜていても、まったくインドネシアをアピールしていません。
地理的にもインドネシアは、国土の大部分が良質な茶葉が産出される「ティーベルト」に属しているのでおいしい茶葉ができるはずなのに残念ですね。