インドネシアのレバランボーナス(THR)とは?支給のポイントと企業側の苦労

Business Indonesia

インドネシアには、断食明け大祭(レバラン、イドゥル・フィトリ)を祝うための特別な手当「THR(Tunjangan Hari Raya)」という制度があります。これは労働法で義務付けられたレバラン前の支給金であり、インドネシア社会において大きな役割を果たしています。本記事では、THRの概要や支給のポイント、そして企業側が直面する苦労について詳しく解説します。

THR(レバラン手当)の概要

「THR(Tunjangan Hari Raya)」は、インドネシアの宗教大祭手当の一種で、特に断食明け大祭(レバラン)を祝うために、公務員や企業の従業員に支払われる特別な手当です。その目的は大きく二つあります。第一に、従業員やその家族が祝日を快適に過ごせるようにすること。第二に、レバラン期間中の個人消費を促進して経済成長を後押しすることです。

THRの支給対象は、公務員・契約社員・正社員など、宗教や国籍を問わず雇用されているすべての従業員です。勤続期間が1か月以上であれば支給が義務付けられており、勤続月数が12か月に満たない場合も期間に応じた割合で支給されます。この包括的な対象範囲が、インドネシアの労働者全体の生活をサポートする大きな支えとなっています。

支給額と支給時期

2025年のレバランは3月31日~4月1日とされており、企業はこの前にTHRを支給しなければなりません。1年以上勤続している場合、固定給(基本給+固定手当)の1か月分がTHRとして支給されます。勤続1か月~1年未満の従業員には、勤続月数を12で割った割合が支払われるしくみです。たとえば6か月勤務の従業員であれば、基本給+固定手当の0.5か月分がTHRとなります。また、レバラン開始30日以内に退職が予定されている従業員にも支給義務がある点は見落としがちなので注意が必要です。

法律ではレバランの1週間前までに支給することが義務化されていますが、実務上は2週間ほど前に支払われることも珍しくありません。2025年の場合、レバランは3月31日~4月1日に予定されていますので、企業はそれより前にTHRを支給する必要があります。支払いが遅れると、THR総額の5%が罰金として科される規定があるため、注意が必要です。

分割払い禁止とキャッシュフローの課題

THRは一括払いが原則とされており、分割払いは認められていません。さらに、現金での支給が必要とされるケースも多いため、一度に大きな資金が必要になります。企業がこの時期に一時的に資金調達を行うのはよくある話で、キャッシュフローが逼迫している場合は特に頭を悩ませる要因となります。

また、企業によっては従業員数が非常に多く、総額で見ると相当な支出が一挙に発生します。外資系企業や規模の小さい現地企業にとっては、この大きな支出と罰金リスクを回避するために、早めに資金繰り計画を立てることが必要不可欠です。

THR支給がもたらす経済的影響

THRが支給されると、国内の個人消費が一気に盛り上がります。特に飲食料品やファッション関連商品、旅行サービスの需要が急増し、関連産業が活況を呈します。政府としても、この消費拡大のタイミングを利用して、経済成長率の目標達成を狙う施策を打ち出すことが多いです。

インドネシアの労働法は、こうした形で従業員の生活を守るだけでなく、結果的に地域経済の活性化にもつなげています。つまり、THRは単なる「お祝い金」というだけでなく、経済循環の潤滑油としての役割も果たしているのです。

企業側が抱える苦労と対策

レバラン前には、帰省や休暇を取る従業員も多いため、人員配置の見直しが必要になります。さらに、THRの支払いに伴う一時的な支出が発生するため、企業側は早期に予算を確保し、資金繰りを明確化しなければなりません。加えて、新入社員や退職予定者への対応も重要です。勤続期間に応じて細かく計算する必要があるため、労務管理部門には正確なデータ処理が求められます。

外国人経営者にとってのハードル

インドネシアで事業を行う外国人経営者にとっては、宗教行事と結びついた慣習や法律への理解が必須となります。特にレバラン前後の休暇スケジュールや人事・経理手続きには注意が必要です。ローカルスタッフとのコミュニケーション不足や、慣習への誤解からトラブルが生じるケースもあるため、しっかりと現地の文化を学び、周到に計画を立てることが求められます。

まとめ

インドネシアのレバランボーナス「THR」は、従業員やその家族の生活を支える重要な制度であると同時に、企業側にとっては大きな財政的・管理的負担を伴う制度でもあります。支給額や支給時期、勤続期間による計算方法は法律で明確に定められており、違反すれば罰金を科される可能性もあります。とはいえ、この制度による個人消費の拡大は、結果としてインドネシアの経済全体を活性化させる重要な原動力です。

レバラン前は特に忙しくなる時期ですが、企業としては早めに予算を確保し、従業員とのコミュニケーションを密にすることでスムーズな支給と運営を目指すことが求められます。THRが円滑に支給されれば、従業員のモチベーション向上や地域経済の発展にも寄与するため、企業と社会の双方にとって大きなメリットを生むでしょう。

今後インドネシアでビジネスを展開する際には、ぜひこのTHR制度への理解を深め、適切な対応を心がけてください。早めの対策こそが、レバラン前後の混乱を回避するカギとなります。

 

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