ティラピアは、焼き魚や煮魚でインドネシアでは、大衆魚とも言われるほど好んで食されている魚です。鯛より美味しいとされていますが、残念ながら現在は日本ではあまり食べられていません。本日は、世界ではメジャーな魚であるティラピアについてお話します。
ティラピアとは、カワスズメ科に分類される淡水魚の名前です。インドネシアではイカン・ニラ(Ikan Nila)と呼ばれています。
ティラピアは「ナイル・ティラピア」とも呼ばれ、原産地はアフリカです。世界各地に生息しており、世界中の暖かい地域で食用として養殖されています。
ティラピアは淡水魚ですが、肉質は臭みが少なく、たんぱくな白身は見た目がクロダイや真鯛に似ていて、味や食感も鯛にそっくりで非常においしい魚です。
日本においては和名を「イズミダイ」や「チカダイ」と呼ばれて第二次世界大戦後の日本では貴重なタンパク源として注目されていました。タイと名前がついていますが、鯛類とは全くの別種です。
日本ではあまり食されていないティラピアですが、世界各国ではティラピアはかなりメジャーな食材です。インドネシアのレストランではどこでも食べられます。
インドネシアだけでなく、中国や台湾、タイ、フィリピン、ミャンマー、マレーシアなどの東南アジアはもちろん、インド、バングラデシュなどの南アジアからアフリカ・中東各国、果てはアメリカや南米に至るまで多くの国で好んで消費されています。
ティラピアは、飼育でかなりの大きさになります。体長は大きいもので50センチ以上、飼育すると80センチ以上になると言われています。体重は900グラム以上で、こちらも飼育では3キロ以上にまで成長します。
しかも水温は10度から40度までで生存が可能と言われており、かなり高温の環境でも生存・繁殖ができます。暑いインドネシアでも育てるのが簡単なので、大量のティラピアが養殖されています。
ティラピアの卵は、直径約 2.8 mmで黄色がかった丸い色をしています。産卵後、体の大きさにもよりますが、メスのティラピアは 300 ~ 1,500 個もの卵を産みます。条件さえよければ、50日の間隔で産卵が可能です。
ティラピアは産卵後に独特の習性があり、メスの親が受精卵から稚魚まで口の中で育てます。卵を口の中で孵化させるこの行動は、マウスブリーダー(口内保育)と呼ばれます。
ティラピアのメスは産卵したあとに卵や孵化したばかりの稚魚を口の中で守り、保護します。稚魚たちは周囲に敵がいない時はメス親の周りを群れで泳きます。
ティラピアは適応力が高いため、水温などの条件さえ整えば問題なく繁殖が行えてしまいます。その生命力の強さから生態系を破壊することも心配されています。
しかも多くの水生植物を食べ雑食性の為、生態系にとってかなりの脅威となっています。
ティラピアは繁殖能力が高いため、養殖用に持ち込まれたものが逃げ出し、手に余ったものが放流されたなどの理由で野生化し、インドネシアの在来魚と置き換わりすべての川や湖で大繁殖して生息域を拡大させて問題になっています。
ティラピアは、日本でも50年以上前に食用として出回りましたが、当時は生臭い等で消費者に受けいれられず、ほとんど流通しませんでした。
その後養殖技術が進歩し、味や食感も非常に美味しい魚となりました。ティラピアは淡水魚でありながら、鯛に味が似ていると言われ、「イズミダイ」として量販店などの鮮魚コーナーや、回転寿司で鯛の代わりに流通していました。
しかし食品表示法の改正により「イズミダイ」と表記して販売することができなくなり、最近、鯛そのものが大量に養殖され安価になったおかげで、ティラピアがめっきり姿を目にしなくなりました。日本ではティラピアよりも他に美味しい魚が年中漁獲できるので、日本の食卓ではメジャーな存在になることはなく今に至っています。
コストコでは、冷凍魚の人気アイテムとしてティラピアが販売されているので、是非試してみてはいかがでしょうか。