成田空港を1時間以上の遅れで出発したJAL729便。その先には、ジャカルタでの深夜乗り継ぎが待ち受けると知りながらも「なんとかなるだろう」と淡い期待を抱いていた私。しかし、まさかここまでギリギリになるとは……。ジャカルタ到着が午前1時、国内線のマカッサル行きは1時55分発に繰り上げられていたため、実質30分程度しか余裕がないという壮絶なタイムアタックが始まりました。降機→入国→荷物受け取り→国内線チェックイン→ゲート到達、これらをわずか30分でこなさなければならない、考えるだけで心拍数が上がる深夜のドラマが繰り広げられます。
JAL729便がスカルノハッタ空港に降り立ったのは、予定より1時間以上遅れた午前0時40分。機内アナウンスでは「到着後、ターミナル3まで20分ほど移動します」と聞いて、「20分も?」と胸がざわつきます。着陸した瞬間、外気の湿度が高い証拠に窓ガラスが一気に曇り、インドネシアの夜特有の熱気が機内に伝わってきました。
さらに追い打ちをかけるのが、A滑走路の夜間閉鎖。B滑走路からターミナル3に向かうため通常よりも移動距離が長く、飛行機がゆっくりと地上を走るのを「1秒でも早く止まってくれ!」と思いながら見守る時間は地獄のように長く感じます。時計を見るとすでに0時50分近く……。国内線のマカッサル行きは1時55分発、1時25分にボーディング開始と連絡があったため、実質30分程度しか残されていない計算です。
ようやく1時ごろスポットに到着したものの、前方席のビジネスクラスや上級会員が先に降機するため、プレミアムエコノミーの自分は通路が開くまで待たされることに。通常なら「ゆっくりでいいや」と思うところですが、今回は時間が命。1分1秒が惜しいのに、「優先クラスの降機をお待ちください」というアナウンスを聞きながら足踏みするしかありません。
待ち時間の間、頭の中では「イミグレに10分、荷物受け取りで10分、国内線チェックイン10分と絶対無理じゃない?」と悲観的な想定がぐるぐる回っています。時計が1時5分を回ったあたりでようやくプレミアムエコノミーの降機が始まり、通路へ。ここからが勝負だとばかりにバッグを抱え、走り出す準備を整えました。
スカルノハッタ空港の到着フロアにダッシュで向かい、周囲の人々をかき分けてイミグレへ突入。幸い、インドネシアでは自動化ゲートが稼働しており、先日バリで顔写真登録を済ませてあるため、スタンプレスですぐに通過できます。実際、ゲートにパスポートをかざして顔認証を行うと、ものの10秒ほどで「ピッ」と音が鳴りゲートオープン。深夜帯ということもあり、イミグレが混雑していなかったのがまた幸運でした。数秒の手続きで入国完了。「これならなんとかなるかも……!」と一気に希望が湧きます。
イミグレ通過後、急いで荷物レーンに向かうと「さすがに人がいないかな」と思いきや、同じように遅れて到着した乗客たちがちらほら。自分の荷物が優先タグ付きなら早めに出てくるかもしれないと期待し、液晶ディスプレイを確認しながら待つと、運良く数分後にキャリーケースがコンベヤー上に。ここで既に1時20分近く。荷物受け取りまでほぼ15分経過で来れたのは奇跡的とも言えます。
税関もインドネシア到着E-CDカスタムというQRコードを提示するだけで、瞬時にチェック完了。荷物を開けられるリスクもなく「どうぞどうぞ」という感じで通過。深夜の税関は担当者も疲れているのかスムーズに進み、時計を見ると1時20分過ぎ。前半戦はこれ以上ないほど順調です。
国内線チェックインカウンターはターミナル3の3階に位置しているため、エスカレーターや長い通路を移動しなくてはなりません。キャリーケースを転がす音が空港の静けさに響き渡るなか、「早く着いてくれ」と念じながら進む。走りたいけれどスーツケースが足元に絡むので思ったより速く移動できないジレンマ。とはいえ、この数分が命取り。周囲の看板を確かめながら焦る気持ちを抑えつつ、なんとかカウンターへたどり着いたのは1時25分。
カウンターに着くと、まるで“もう締め切った後”という雰囲気が漂っており、待合の乗客は皆無。数名のスタッフが無線でやりとりしている姿に、「これ、乗れないんじゃ……」と一瞬頭をよぎる。フライトは1時25分ボーディング、1時55分出発と聞いているので、チェックイン最終締め切りは完全に超えている可能性があります。
とりあえず国際線の到着が遅れた事情を説明し、事前にWebチェックインは済ませていること、荷物をなんとか預かってほしいことなどを懇願。スタッフは無線で連絡を取り合い、しばらく上司と相談して「OK、荷物を預かってあげるよ」と折れてくれた。これがもし「何があってもムリ」と断られていたら、その場で終了でした。ここでガルーダのステータス会員ということを伝えたのが大きな助けになったのかもしれません。バタバタと荷物を預けた時点で1時30分を過ぎていました。
最終案内が鳴り響くなか、16番ゲートへ突き進む
空港内のアナウンスでは「マカッサル行き、最後のご案内です」と繰り返し流れており、まさにラストチャンス。手荷物検査では一瞬列に阻まれるものの、深夜で乗客が少ないのが幸い。焦る気持ちを必死に抑えてセキュリティを通過し、16番ゲートを示す看板に従って急ぎ足。
深夜1時半を回っているためか、店やカフェは閉まっていてシャッターが降りており、人通りもほとんどないのが救い。とはいえ、広いターミナルを縦断するのは運動不足の身体にきつい。どれだけ息を切らせても止まるわけにはいかず、「間に合え!」と心の中で叫びながらゲートへ向かう。
ついに1時45分、搭乗開始から20分経過したゲートで「チケットはこちらへ」とスタッフが急かしてくれ、「早く中に入ってください!」という熱い視線。深夜便でゲート周りが静まり返っている中、最後の搭乗者が私というプレッシャーを痛感するも、ひとまず機内へ到達。「ここまで何とか走ってきた甲斐があった…」と安堵が込み上げます。
座席に着くと窓側で、滑走路脇に止まるコンテナ車からまさに私のキャリーケースが載せられている光景を目撃。こういうときは心底「自分の荷物だ…」と嬉しさが込み上げるものです。深夜の空港の灯りのなかで、1個だけ積み込まれる様子を見たら、もう胸が熱くなりました。「よかった、置き去りにされなかった!」とほっと一息。
ラストコールぎりぎりでゲートに入り、荷物も間に合い、乗務員の「席にお座りください」という声に従いながら、改めて今回の“30分乗り継ぎ”がいかに綱渡りだったかを噛みしめます。もしどこかで数分のトラブルがあれば、確実にアウトだったというスリル。結局1時55分にドアクローズし、定刻に滑走路へ向かうときの開放感は、言葉にしがたい達成感に満ちていました。