【中国ワクチン外交】インドネシアで中国製ワクチン1月にも供給開始か
2021年になっても感染拡大が止まらず、とうとう日本でも、今月7日にも昨年に引き続き、1都3県の首都圏にて緊急事態宣言が発令されそうです。昨年末は出さない方向が強かった政府ですが、全く逆の方向となった感があります。
1か月、1都3県で緊急事態宣言が出されると家計消費が3.3兆円下がるとの分析もありますが、何より8時までと営業時間が制限される飲食への影響が心配です。
飲食店の時短要請が主体で、効果にかなり疑問でありますが、状況改善には仕方がないような気もします。マグロの初セリの価格も昨年の10分の1に落ちたようで、それだけ既に同業種への影響が大きいことがわかります。
欧州では、最もコロナの影響が大きい英国では再度ロックダウンを再開するとのこと。その他欧州各国ではコロナの感染者数も依然増加傾向にありますが、日本においても、すべての外国人の往来を禁止するようですので、再度鎖国のような状態になってしまいそうです。
中国のワクチン外交
一方で、感染収束を宣言している中国の存在感が強まっています。
ワクチン外交といって、この戦略には、新型コロナ流行初期の中国政府の対応への怒りや批判をかわし、悪化したイメージの回復を図ってワクチン外交を展開しているのは間違いないと感じます。世界の富裕国が供給量に限りのある欧米の大手製薬会社の新型コロナウイルスワクチン確保に奔走する中で、中国は積極的に、資金力の弱い国々に中国製ワクチンの提供を申し出ています。
中国のワクチン外交によって、バイオテクノロジー企業の知名度を上げ、アジア内外での中国の影響力を強化・拡大するなど、複数のメリットがありそうです。
インドネシアもその国にひとつで、昨年12月に中国製造の300万回分の新型コロナワクチンがインドネシアに輸出され、中国のワクチン外交によってインドネシアに対して影響力を強めています。
ブディ保健相は「1月早々にも全国34州の医療従事者約132万人へのワクチン接種を開始したい」と表明していますが、実際の接種は、保健省の食品医薬品監督庁(BPOM)による緊急使用許可の発行後になるそうです。
中国製のワクチンの信頼性が低い懸念
ただ、インドネシア地元メディアでは、政府が低価格と臨床試験の速さから中国シノバック製ワクチンを選んだとの指摘が出ています。
CNNインドネシアは、「インドネシア以外にシノバック製を注文した国はあるのか?」「臨床試験の情報が見当たらない」といったSNS上の声を引用し、同社製ワクチンについて「効果を案じる声が少なくない」と報じています。
政府が昨年11月に公表した世論調査でも、回答者の27%がワクチンの安全性や種類について疑問視していました。
つまり、中国製ワクチンが現在時点で十分な信頼性を得ていないということにつながります。こうした不信感に加え、ワクチン供給を中国に依存せざるを得ない貧しい数十の国々で国民が質の劣ったワクチンを与えられたと感じれば、世界的に大きな政治問題になる可能性もありそうです。
中国が米国不在の保健分野をリード
中国政府はパンデミックの初期には、マスクや防護服などの大量輸出を急ぎ、医療がひっぱくしていた欧州・アフリカ各地に医療チームを派遣しました。
そして今、欧米の製薬会社がワクチンの供給を始める中で、中国製ワクチンの大量供給を開始し、次々と合意を結んでいます。
相手国には、中国との関係がぎくしゃくしているフィリピンやマレーシアなどの国も含まれています。インドネシアは南シナ海への中国進出に苦言を呈してきたことをワクチン外交で棚げにしようとの意図も見え隠れします。
健康のシルクロード
全世界でワクチン接種を推進するためには、超低温での輸送を可能にする低温物流網(コールドチェーン)や保管施設の整備も必要です。
すでに中国の電子商取引大手アリババは、アフリカ・中東へのワクチン供給拠点となる倉庫をエチオピアとアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイに建設したそうです。
また、中国政府はブラジル、モロッコ、インドネシアなどにワクチン製造施設を建設しているほか、中南米諸国に10億ドル(約1030億円)規模の資金提供を約束しています。
これらのインフラを、中国企業はコロナ後にも利用できるとのもくろみです。
だが、中国の気前の良さは100%利他的なものとはいえない。中国政府が求めているのは外交上の長期的な見返りを計算しています。
『健康のシルクロード』と銘打たれた一連の取り組みは全て、中国の国際的な評判を回復しつつ、中国企業向けの新たな市場を開拓することにつながっているといえそうです。
「公益」を掲げて世界中に中国製ワクチンを提供する習近平国家主席の動きは、中国こそが世界の保健分野を主導する国だとアピールする機会になっている格好です。
中国は、EUとの投資協定は大筋合意にたどり着き、アジアでのRCEPに続きEUとの結びつきも強め、更に存在感を高めつつあります。更にロシアが対中国でエネルギー輸出の強化を図っており、今後ますます、世界経済が中国を中心に展開されていく情勢を注目していく事になりそうです。