【インドネシアで中国ワクチン接種開始】有効性に疑問?
1月13日インドネシアの新型コロナウイルスの1日の新規感染者数は、1万1,278人となり、過去最多を更新してしまいました。年が明けてから1万人を超える日が目立ち始めて累計感染者は85万人を超えた中で、なかなか感染が止まらないインドネシアの状況ですが、同日から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。中国の製薬大手、シノバック・バイオテック社が開発したワクチンをインドネシア国民向けに接種していくとのことです。
大統領が一番先に接種
1月13日午前中、ジョコウィ大統領が最初に接種を受けて、「大統領、ワクチン接種第一号に」の見出しで大きく報道されました。インドネシア国民に安全性の強調をアピールした形になります。インドネシア政府は国民の7割にワクチンを投与し、免疫を持った人が増えて感染拡大を抑える「集団免疫」を獲得したい考えです。
ジョコウィ大統領がワクチンを接種する様子は、ユーチューブで生配信されました。「安全でハラルなワクチン」と印字されたボードの前に座り、大統領宮殿で接種を受けました。大統領の公式インスタグラムアカウントには、まず血圧を測定し130/67でした。次に、これまで新型コロナウイルス陽性だったことがあるか?最近咳や鼻水などの症状があるか?心疾患があるか?腎臓疾患があるか?などいくつかの問診にすべていいえと答え、左腕に接種しました、とワクチン接種時の状況について詳しく投稿されています。
ワクチンはハラル認証
シノバック・バイオテック社製のワクチンについては、保健省の国家医薬品食品監督庁(BPOM)が1月11日に緊急使用許可を出しました。インドネシアでコロナワクチンの緊急使用許可を出したのは初めてです。使用許可を受けて、インドネシア・ウラマー評議会(MUI)もワクチンが、イスラム教徒が戒律に従って接種が許される「ハラル」だとする宗教見解を出しました。ハラル認証を受けた形になりますので、イスラム教徒も安心して接種できる体制が整いました。
インドネシア国民の7割接種を目指す
政府は全国34州の自治体にワクチンの配布を開始している。ブディ保健相は「集団免疫を獲得するためには国民の7割がワクチンを接種する必要がある」と述べ、1億8,000万人を対象に段階的に接種できるようにすると明らかにしました。
ジョコウィ大統領は先に、国民向けのワクチン接種は無償で行うと表明。スリ財務相は、ワクチン接種には少なくとも73兆ルピア(約5,382億円)の予算が必要になると明らかにしています。
政府は昨年12月にシノバックから300万回分のワクチンを調達。これとは別に、シノバックから1億2,250万回分、米バイオ医薬ベンチャーのノババックス、英アストラゼネカ、米ファイザーからそれぞれ5,000万回分を発注しています。
さらに保健省は12日、新型コロナのワクチンを各国が共同出資・購入する枠組み「COVAX(コバックス)」を通じて少なくとも5,400万回分、最大1億800万回分を調達する契約を締結したと表明。同日には、国営製薬持ち株会社ビオ・ファルマで製造するワクチン原料1,500万回分がシノバック社から到着した。今後はインドネシア国内でワクチン製造をする予定です。
首都ジャカルタでは15日から接種開始
首都ジャカルタ特別州では15日から、医療従事者6万人を対象に、ワクチンの接種を開始する予定です。州保健局のウィドヤストゥティ局長によると、州内の医療従事者は約13万1,000人。州には、第1段階の接種用に12万回分のワクチンが割り当てられており、ワクチンは1人につき2回接種します。
有効性に疑問も
BPOMはシノバック製のワクチンについて、西ジャワ州バンドンで国営製薬持ち株会社ビオ・ファルマが行った第3相臨床試験で有効性が65.3%だったと表明しています。またワクチンの副作用については、注射部位の痛み、腫れ、筋肉痛、倦怠(けんたい)感、発熱などで、軽~中程度と説明しています。
一方、ブラジルでは、インドネシアと同じシノバック・バイオテック社が開発した新型コロナウイルスワクチンの有効性は、当初よりも大幅に低い50.38%だったという後期段階の臨床試験結果を、サンパウロ州政府が発表したことで驚きがでています。
WHOの最低有効率が50%としているので、ぎりぎりセーフの状態で、規制当局に承認される基準は満たしているが、当初発表された78%を大幅に下回ることになっています。このため中国製ワクチンに関するデータの信憑性への疑問や、透明性が欠如しているように見える状況に対する疑念が生じている状態です。
これから接種率が上がった時に、実際の有効率がどのようになり、実際のところ感染者が減って、ワクチンが効くのかの検証はこれからの段階であろうと思われます。