昨日の5月26日は約3年ぶりの月が地球の影に覆われる皆既月食でした。今回はスーパームーンと呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日にも重なっていて、注目されました。
インドネシアでは、毎年5月の最初の満月の日は、仏教徒向けの最大の行事である「ワイサック」で祝日となります。
国民の大半がイスラム教を信仰しているインドネシアですが、様々な宗教の信仰を認め、多様性を尊重している理由で、ワイサックを国民の祝日に制定していることからも分かります。
本日は、日本ではあまり知られていない「ワイサック」についてお話します。
インドネシアと聞くとイスラム教をイメージする人が多いですが、実はそうではありません。インドネシア政府はイスラム教、ヒンドゥー教、キリスト教(プロテスタント・カトリック)、仏教、儒教の宗教を国教と定めていて、国民には信仰の自由が保障されています。
信仰の割合はイスラム教 86.69%、キリスト教 10.72%(プロテスタント 7.60%、カトリック 3.12%)、ヒンズー教 1.74%、仏教 0.77%、儒教 0.03%、その他 0.04%(2019年、宗教省統計)と言われていて、インドネシアに仏教徒は200万人程いる計算です。
現在インドネシアで仏教を信仰しているのは、主に中華系の民族であると言われています。
インドネシアの仏教徒向けには、ワイサックが祝日となります。ヒンドゥー教と同様に、仏教もインド文化の影響を受けてインドネシア地域に伝わりました。シャイレーンドラ王朝、シュリ―ウィジャヤ王朝などの支配を受け、仏教はインドネシアの広範囲に浸透します。
ジャワ島中部の世界遺産「ボロブドゥール寺院」は世界最大級の仏教寺院です。
ワイサック(Waisak)の語源はサンスクリット語からきているようです。毎年5月の最初の満月の時、ブッタの誕生・悟り・入滅を祝うために行われる仏教と最大の行事となります。2021年のワイサックは5月26日です。仏暦2565年にあたります。仏暦とは、ブッダの没年を基準とする暦法です。日本では花祭りと呼ばれている日です。
ワイサックの祭典では、ブッタが生まれ、35歳の時にブッタとして目覚め悟りを開き、ブッタが80歳の時に涅槃(ねはん)に入った(入滅=死)ことをワイサックでお祝いすることにしました。
ワイサックで、世界遺産であるボロブドゥール寺院で、説法と祈りが捧げられます。
ワイサックは前日の準備の儀式から始まり、当日は早朝からムンドゥッ寺院で行われる儀式に多くの僧侶や仏教徒達が集まり、パウォン寺院、ボロブドゥール寺院の順に僧侶や信者達による行列の行進しながら参拝していきます。
ボロブドゥールに到着した行列は、経文を唱えながら寺院の周りを3周し、その後宗派ごとの説法や祈り、瞑想などの儀式が行われます。
最後のクライマックスは、ランピョンという灯籠飛ばしが有名です。ボロブドゥール寺院はライトアップされ、夜空に舞う灯籠と幻想的な瞬間となります。
日本人は無宗教とも言われていますが、「神仏習合」と言われ、お寺にも神社にもお参りしています。家でも仏壇にお参りし、神棚にも榊を買って供水を変えるなど、少なからず信仰はあります。一応、日本は仏教の歴史があり身近なものです。ワイサックを通じ、少しでも仏教に関する事も知る必要があると思いました。