ジャカルタからバンドンへの移動に革命をもたらした高速鉄道「Whoosh」。インドネシアで初めて開業した高速鉄道は、開業から1年を経て、地元の人々や観光客に愛される存在となりました。この便利で快適な移動手段を体験するために、私は今回、日帰りでWhooshのビジネスクラスに乗り、ジャカルタのハリム駅からバンドン近郊のテガルアール駅まで旅をしてきました。新しいインフラがどのように地域と人々を結びつけ、日常の風景を変えつつあるのか。その変化と、旅路で出会った素晴らしい景色、そしてインドネシアの高速鉄道ならではのサービスの数々を紹介していきます。
今回の一時帰国の前に、開業して1年経過したジャカルタ・バンドン高速鉄道「Whoosh」に乗ることにしました。早朝、スカルノハッタ空港に到着すると、朝の新鮮な空気とすばらしい天気の空が迎えてくれます。空港はまだ静かで、これから始まる旅への期待が高まります。まず向かったのは、空港近くのオーチャードホテル・バンダラ。ここはこれまで何度も利用している定宿で、早朝に到着しても荷物を快く預かってくれるのが助かります。ホテルに着くと、いつもと変わらないスタッフの温かい対応にほっとし、少しリラックスした気持ちに。重たいスーツケースを預け、必要なものだけを持って身軽になり、いよいよ日帰りの高速鉄道の旅に出発します。
次に向かうのは高速鉄道のジャカルタ側の始発駅、ハリム駅です。空港からはタクシーでの移動が便利で、スムーズに進む道中、朝の空気が澄んでいるため景色もくっきりと見え、インドネシアの日常の一部を感じられます。私はタクシー内で慌てないちょうどよい出発時間の9時10分発のG1221列車を事前に予約して、余裕をもって8時15分頃には駅に到着しました。
駅に到着してみると、まだ早い時間帯のためか、人が少なく、落ち着いた雰囲気が漂っています。まず朝食をとるため、さっと食べられるものを探すと、サブウェイの店舗が目に入りました。
インドネシアのサブウェイは少し注文が複雑ですが、なんとか「スパイシーイタリアン」を注文。
アイスコーヒーと共にいただきながら、簡単な朝食を楽しむことができました。こうして体力も回復し、いよいよWhooshのビジネスクラスの乗車に備えます。
朝食後、駅の2階にある待合エリアへ移動し、ビジネスクラス搭乗の旨を伝えると、ラウンジへ案内されました。このラウンジは、ビジネスおよびファーストクラスの乗客専用で利用できるため、落ち着いた環境で出発までの時間をゆっくりと過ごせるのが魅力です。
ラウンジ内は快適なソファが並び、静かでリラックスできる空間です。早朝からの移動で少し疲れが出ていたため、持っていたアイスコーヒーを飲みながらしばしのんびり。ラウンジ内のサービスには、軽食や飲み物が揃っており、利用客のリラックスした様子が印象的でした。列車の出発20分前には、優先搭乗が可能であることが案内され、誰よりも早く列車に乗り込むことができるのも、このビジネスクラスの大きな特権です。
ラウンジを出てホームに向かうと、そこには真っ赤な流線型の車体を持つWhooshが堂々と停まっており、見る者に強烈なインパクトを与えます。未来的でありながら、どこか優雅さも感じさせるデザインに心を奪われ、写真を撮らずにはいられません。
ビジネスクラスの座席は1号車にあり、広々としたシートが目を引きます。案内係の方に出迎えられながら車内へと入ると、赤い革張りのシートが高級感を醸し出し、座り心地は抜群。頭を預けるだけで体が包まれるような座席に身を沈め、最高の快適さを感じました。車内はすっきりとした内装で、ビジネスクラスならではの落ち着いた空間が広がっています。
定刻通りにドアが閉まり、列車がゆっくりと動き出すと、これから始まる高速の旅に胸が高鳴ります。車窓からはジャカルタの街並みが流れ、列車は徐々にスピードを上げていきました。
ジャカルタを出発した列車は、しばらくすると速度を一気に上げ、まるで滑るようにボゴールの街並みを通り過ぎていきます。特に印象的なのは、カラワン駅付近で感じるスピード感。350km/hという高速で走行しているにもかかわらず、車内は驚くほど静かで揺れも少なく、まるで空中を滑るような不思議な感覚に包まれます。
途中、キャビンアテンダントの方が軽食を手渡してくれました。
中にはパン、水、そして小さなお菓子が入っており、ちょっとした休憩にぴったり。
さりげないサービスですが、こうした細やかな配慮が旅をさらに快適なものにしてくれます。ビジネスクラスはやや値が張るものの、優先搭乗やラウンジの利用、そして快適な座席や軽食の提供が含まれているため、リラックスした旅を求める方にはおすすめです。
わずか30分でパダララン駅に到着すると、多くの乗客がここで降車し、バンドン市内へのフィーダー列車に乗り換えていきます。週末ということもあり、ここまではほぼ満席でしたが、パダラランを過ぎると車内は一気に空き、終点テガルアール駅までの乗客はわずか数名となりました。
静かになった車内で窓の外を眺めると、バンドン郊外の緑豊かな景色が広がり、心が穏やかになります。そして約15分後、ついに終点のテガルアール駅に到着。
ジャカルタからわずか1時間以内でバンドン郊外まで来られるこの高速鉄道の便利さには改めて驚かされます。